2008 Fiscal Year Annual Research Report
花はいかにして特定の送粉者を誘引するのか-情報化学物質としての花の匂いの役割
Project/Area Number |
08J03643
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 朋子 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 送粉 / 生殖隔離 / 化学生態学 / 絶対送粉共生 / 種特異性 / カンコノキ / チャルメルソウ |
Research Abstract |
植物-送粉者間の関係の強度の差を決定づける要因、すなわち植物が特定の送粉者のみを誘引し、他を排除する機構を明らかにすることを目的とし、研究を行った。まずはジェネラルな共生系の発見を目指し、ジンチョウゲ科ガンピ属5種を対象に訪花観察および内1種について花の匂いの経時的な採集と分析を行った。結果、ガンピ属植物はいずれも夜間に、ヤガ科、シャクガ科、メイガ科に属する多数の蛾類によって送粉が行われることを解明した。経時的な花の匂いの採集の結果、花の匂いは蛾類が訪れる夜間にのみ放出され、匂いの化学構成は、モノテルペン・セスキテルペン・ベンゼノイドであり、これまで報告されている蛾媒花と非常に似ていた。これらの結果を合わせると、ジンチョウゲ科ガンピ属植物は夜間に蛾類が好む花の匂いを放出し、多種多数の蛾類を花へ誘い寄せ、送粉を成し遂げているといえる。続いて、特異性の高いチェルメルソウ節植物における、送粉者を決定する揮発性物質の特定を目指して研究を行った。まずはじめに花の匂いを採集し、分析を行った結果、チャルメルソウ節植物の花はLilac aldehyde,linalool,Decanalのいずれかが優先する匂いを放出し、大きく3つのタイプに分けられた。花の匂いのパターンが訪花者群集パターンおよび遺伝的距離とより正の相関を持つかを調べたところ、花の匂いのパターンはより訪花者群集によって説明ができることがわかった。最後に、カンコノキとホソガの種特異性を支える物質の特定を目指して研究を行った。それに先駆け、雌花と雄花をわけて採集・分析を行った。結果、カンコノキ属では雌雄花間で匂いの構成物質が異なっていた。さらに、それらの種間比較を行ったところ、種内の雌雄間の匂いの違いよりもむしろ種間の同性花間での匂いの違いが小さかった。チャルメルソウ類とカンコノキ属の、特異性の高い送粉共生系では、花の匂いで特定の送粉者を誘引していることが明らかになった。
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Research Products
(4 results)