2009 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物結晶の電子・欠陥構造に基づくエネルギー変換デバイスの材料設計
Project/Area Number |
08J03646
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
折笠 有基 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 固体酸化物形燃料電池 / 電極反応 / 酸素ポテンシャル / X線吸収分光法 / 酸素不定比性 |
Research Abstract |
固体酸化物形燃料電池(SOFC)の正極材料として(La,Sr)(Co,Fe)O3系材料(LSCF)や(La,Sr)MnO3(LSM)が広く用いられている。同材料の電極反応については種々の実験手法により評価がなされているが,実際のデバイス作動条件下における化学状態を直接観測した例はほとんどない。我々はこれまでに,高温で雰囲気・印加電圧を制御しながらX線吸収分光測定を行うことができる高温電気化学in situ XAFS測定装置を作製し,その測定および解析方法の確立に成功している。本研究ではこれを適応しLSCFおよびLSM緻密薄膜をモデル電極とし、XAFS測定を用いた電子構造解析からデバイス作動条件下の酸素ポテンシャル分布の評価を行い,同材料における電極反応機構の解明を目指した。 開回路状態では電極内部には酸素ポテンシャル勾配は生じないため、空気/電極/電解質の酸素ポテンシャルは酸素分圧p(O2)gasに依存する。電極に過電圧がかかっているときは、電極内に酸素ポテンシャル勾配が発生する。この酸素ポテンシャル勾配は反応の律速過程に応じて空気/電極または電極/電解質界面および電極内部で変化すると考えられる。電極内部における化学ポテンシャル勾配はXANES吸収端位置のシフト量に対応している。シフト量と酸素分圧、電極過電圧の関係を求めた結果LSCFにおいて開回路状態で酸素分圧を変化させたときの吸収端位置のシフト量と、その変化に対応する過電圧を印加させたときの吸収端シフトは良い一致を示した。これは電極過電圧による酸素ポテンシャル変化が空気/電極の界面で急激に生じていることを示している。一方、LSMにおいては吸収端シフト量に差がみられ、ポテンシャル勾配が電極内部にあることが示された。本結果より、LSCFでは電極表面反応、LSMでは酸化物イオン拡散が律速過程であることを直接的に示した。
|
Research Products
(2 results)