2008 Fiscal Year Annual Research Report
植物における非エピジェネティックなトランスポゾン転移抑制機構の研究
Project/Area Number |
08J03664
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内山 貴子 Hokkaido University, 大学院・農学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トランスポゾンTam3 / エピジェネティック / キンギョソウ(Antirrhinum) / 転移制御 / スタビライザー(Stabiliser) / 転移酵素遺伝子 / 胚発生 / 宿主遺伝子 |
Research Abstract |
宿主によるトランスポゾンの転移制御を理解する端緒としてキンギョソウに内在するトランスポゾンTam3のStabiliser(St)遺伝子による転移制御機構についての研究を行った.まずTam3の転移酵素遺伝子の発現がRNAおよびタンパク質レベルにおいて検出されたことから,この機構が他のDNAメチル化やジーンサイレンシングに代表されるエピジェネティックな機構による,転移酵素遺伝子の発現抑制を通した従来のトランスポゾンの転移抑制機構とは異なることを示した.続いて原因因子を解析するため,遺伝解析により転移抑制効果をもたらす主働的な効果を有する一因子を見出し,トランスポゾンディスプレイ法から得られた配列をプローブにしてゲノミックライブラリーからの遺伝子のスクリーニングを行った.その結果,単離領域内に,遺伝子構造を予測することのできる領域を見出すことができなかったので今後,遺伝子制御領域である可能性を考えて原因因子を特定していく予定である.またTam3は低温特異的に転移することが知られているが,子葉や胚軸など胚発生時期に形成される組織においては,育成した温度によらず転移することが明らかになった.そこで,その転移様式に関してSt遺伝子の効果を調査したところ,St遺伝子を有する系統では一生を通じて転移を抑制していると考えられていたが,野生型と同様に胚形成期という特定の成長段階においてその抑制効果が失われ,温度によらず転移が起こることが明らかになった.この胚発生期におけるTam3転移の挙動から,Tam3の転移が宿主の遺伝子発現機序の中で遺伝的に複雑なコントロールをうけていることが明らかとなった.これはトランスポゾンの転移制御について,宿主に応じた多様な制御機構が存在する可能性を示唆しており,育種でのトランスポゾン研究において重要な知見となるものである.
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Research Products
(3 results)