2009 Fiscal Year Annual Research Report
植物における非エピジェネティックなトランスポゾン転移抑制機構の研究
Project/Area Number |
08J03664
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内山 貴子 Hokkaido University, 大学院・農学研究院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | トランスポゾン / エピジェネティック / キンギョソウ(Antirrhinum) / 植物遺伝育種学 |
Research Abstract |
トランスポゾンと宿主ゲノムとの相互作用を理解することを目標に,キンギョソウに内在するトランスポゾンTam3のStabiliser(St)遺伝子による転移制御機構についての研究を行った.Tam3は低温育成時に転移するという特徴をもったトランスポゾンであるが,St遺伝子を有するとその転移が抑制される.これまでの結果から,St遺伝子はTam3と連鎖しており,Tam3の挿入によって生じたloss of functionの変異であることが明らかとなっている.また,DNAのメチル化やジーンサイレンシングに代表されるような,転移酵素遺伝子の発現抑制によるエピジェネティックな転移抑制機構の関与を否定する結果も得られている.StabiliserのTam3転移抑制機構の解明に向けた調査では原因因子を解析するため,トランスポゾンディスプレイ法によって得られた配列をプローブにしてゲノミックライブラリーからの遺伝子のスクリーニングを行い,St系統特異的な断片領域を単離することができた.今年度,その単離領域周辺15kbにわたるシーケンス解析を実施し,詳細な構造の調査を行った.その結果,Tam3の挿入点近傍に,アミノ酸レベルでTam3-転移酵素と非常に相同性の高い配列が存在していることがわかった.またStを有する系統と野生系統ではTam3内の転移酵素結合サイトのDNAメチル化レベルが有意に異なることがわかった.現段階では,このTam3-転移酵素様タンパク質が通常の転移に必要であり,そこにTam3が挿入したことで機能阻害されているというシナリオが考えられた.この機構解明や今年度計画していた分布調査が一層進展することでトランスポゾンと宿主ゲノムとの関連性を利用した育種学的な応用価値を見出すことができるのではないかと考えている.
|
Research Products
(3 results)