2009 Fiscal Year Annual Research Report
弥生・続縄文時代の東北日本における資源利用・居住システムの研究
Project/Area Number |
08J03699
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大坂 拓 Meiji University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 弥生時代 / 続縄文時代 / 東北日本 / 資源利用 / 居住システム |
Research Abstract |
平成21年度は、東北地方全域を対象地域として、縄文時代晩期末から弥生時代前期の土器型式編年再構築を第一の重点課題とした。この課題に関しては既に、平成20年度の調査研究成果を論文発表(大坂2010a「III(2)-2下北半島地域における初期弥生土器編年」安藤広道編『東日本先史時代土器編年における標識資料・基準資料の基礎的研究』、大坂2010b「大洞A_2式土器の再検討」明治大学考古学研究室編『考古学集刊』第6号)していたが、先行研究ではあまりにも強く東北地方全域にわたる斉一性が想定されていたため、見解の差異が大きく、十分な理解が得られていないとの指摘を受けた。そのため平成21年度には、下北半島地域で主体的に発掘調査をおこなって資料の蓄積をはかるとともに、弘前市を中心とした津軽平野地域、八戸市周辺の資料を可能な限り実見し、既存報告に見られる資料整理の問題に関わる批判的検討を含めて論じた。結果として、従来、大きな争点となってきた砂沢式土器と近畿地方における弥生時代前期土器編年の対比に関わる問題-砂沢式が畿内第I様式中段階に並行するか、新段階に並行するか-は、「浮線文土器群」と「大洞式土器群」の間に位置する第3の土器群とも言うべき「特殊工字文系土器群」が認識されてこなかったことに起因していたことを指摘した。この指摘によって、東北北部の類遠賀川系土器群に見られる型式学的特徴と、土器型式編年網の間に指摘されてきた矛盾が解消され、議論が新たなステージに進むことが期待される。 第二の課題として、弥生時代中期の津軽平野南部における「田舎館式土器」を検討した。今回は、以前に検討した恵山式土器の編年研究(大坂2007「恵山式土器の編年」『駿台史学』第130号)との対比を通じて「田舎館式土器」の型式編年が極めて見通しやすい構図のもとに整理できることを主張した。また、広域編年上の位置を検討することで、津軽平野南部における灌漑稲作が弥生時代前期に始まった後に大きな年代的空白をもたずに平野部で大規模に展開するとともに、弥生時代III期のなかでその終末を迎えていることを予察した。
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Research Products
(3 results)