2008 Fiscal Year Annual Research Report
線虫初期胚での腸特異的なcis-regulatory elementの予測と同定
Project/Area Number |
08J03719
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
森 明弘 The Graduate University for Advanced Studies, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | C.elegans / 転写制御 / cis-regulatory module / プロモーターデザイン |
Research Abstract |
多細胞生物の時期・部位特異的な転写制御は、正常発生にとって必須である。この制御は、蛋白質(転写因子)が遺伝子近傍の特異的な領域(cis-regualtory module,CRM)へ結合することで引き起こされる。先行研究から、部位特異的に転写制御するCRMはいくつか同定されているが、同定されたCRMだけでは正常な遺伝子発現を反映することは稀である。そこで本研究では、C.elegans(以下、線虫)の初期胚を用いて時期特異的な転写制御メカニズムの解明を目指した。具体的には、CRM予測のため独自開発したFEsystemを用いて、転写制御に関与するCRMを予測し、検証実験によりそのCRMの検証を行った。平成20年度の計画は、線虫の腸系譜で時期特異的に発現を開始する遺伝子群の5'側上流配列からのCRMの予測と同定とした。また理論分野では、検証実験の結果をもとにCRMの予測プログラムのアルゴリズムの改良を行うとした。 本年度の研究成果として、以下の3点を挙げる。(i)腸系譜のE2,E4,E8各時期から、時期特異的な発現を制御するCRMを同定した。(ii)線虫の腸系譜での転写制御は、部位特異的な発現に関係するGATA因子と時期特異的な発現に関与するCRMとの協調によることを見出した。(iii)同定したCRMの改編・交換による遺伝子発現開始時期の調節が可能になった。 本研究の意義は、線虫の特徴を生かし、in silicoとin vivoを組み合わせた実験により、多くの知見を生み出し、時期特異的な転写制御メカニズムを解明することである。 最後に本研究の重要性について2つ述べる。第一に、発現パターンを用いて単一種からのCRMを予測・同定することが可能になった。これはFEsystemの予測精度が高いため、他の高等動物への応用も可能であることを示唆している。第二に、プロモーター配列のデザインの可能性を示唆する。これは、遺伝子のプロモーター領域を解析し、遺伝子発現の時期・場所を予測するだけでなく、プロモーター自体を設計することで、研究者が望む場所・時期で遺伝子の発現が可能になることを示唆している。
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Research Products
(5 results)