2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期日本における学校教育と職業世界との関係性構築過程に関する研究
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08J03730
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石岡 学 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 職業指導 / 学校から職業への移行 / 初等教育 / 職業世界 / 学校の社会的機能 / 就職 / 戦間期 / 「教育的」 |
Research Abstract |
平成21年度は、昨年度に引き続き、戦時体制下日本の小学校(昭和16年度より国民学校と改称)における職業指導に焦点を当てて研究を進めた。具体的には、戦時下における学校職業指導の意味づけ・位置づけの変容について、労務統制政策などの制度的変遷と関わらせつつ明らかにした。得られた主な知見は以下の通りである。1、戦時期の学校における職業指導は、労務統制の手段としての位置づけを明確にしたものとなった。個々人の幸福ではなく国家にとって意義があるかどうかという観点から職業を選択し、その職業に進んで適応・順応していけるような心構えを醸成することが学校での職業指導の眼目とされた。2、戦時期の職業指導論が精神論に傾斜していったことの背景としては、労務統制とその強化というこの時期特有の状況だけでなく、戦時期以前との連続性(適性検査等の「科学性」に対する疑念、職業指導の方法論的分岐)や学籍簿改訂にみられる文部省の職業指導に対する認識(科学性の軽視と「教育的」であることの重視)もあった。3、こうした戦時期における職業指導の展開は、1942年文部次官通牒による職業指導科とその授業要項の設定に象徴されるように、職業指導を本格的に学校教育に組み込む契機となるものであった。すなわち、職業紹介システムだけでなく、学校教育の面においても、戦時期は戦後の学校と職業世界との関係性の基礎が完成された時代であったといえる。4、「学校における職業指導の本質は"愛"である」とする論理は、1940年代には文部官僚によっても採用されるところとなり、職業指導は制度だけでなくこのような「愛」によっても「教育的営為」として学校教育の中に組み込まれていった。 戦時期の職業指導を、その前後の時期との連続性という観点から明らかにした研究はこれまでになく、本研究の成果は極めて意義の大きいものといえる。
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Research Products
(1 results)