2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J03736
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 和也 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地図 / 鉄道路線図 / 都市 / 地図の社会学 / ローカリティ |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続き、「都市居住と都市-農村関係の社会学的研究」という研究課題に沿い、都市居住者の実践を、地図の社会学的分析を通じて調査・研究を続けてきた。本年度は、地図の中でも特に鉄道路線図に着目した。具体的には、これまで内外で出版されてきた鉄道路線図、および地下鉄路線図を収集し、分析した。路線図は、時刻表や旅行ガイドなどに収録されていることが多く、それらは地図学的・地理学的な分析対象となってきた。たとえば、日本国際地図学会は、1995年にその機関誌上で「鉄道地図の世界」という特集を組み、鉄道路線図の変遷やその意味について、地図学的・地理学的な分析を行っている。他方、地図を社会的存在と見なし、それを社会学的に分析する試みは、若林幹夫の研究や、最近であれば松岡慧祐の研究を挙げることができる。これらの研究は、地図が社会的産物であることを明確に示し、人びとの「地図の想像力」に対して理論的接近を試みるものであったと言えるだろう。その結論として、人びとが社会を把握する際に地図が重要であること、および、地図によって人びとの社会観が大きな影響を受けるということが指摘された。本年度は、上記の研究成果を踏まえた上で各種路線図を比較検討することで、人びとの社会意識の変容に迫っていった。鉄道路線図は徐々に地理的正確さから乖離していくが、そのような鉄道路線図の受容は、その背景に、高速な線的移動の日常化という事態が存在するということが明らかになった。また、面的移動から、点から点への線的移動へと変化することで、人びとがどのように社会を思い描いているのか、ということについても変化が見ることができた。以上から、断片化したローカリティを線的に結びつけていこうとする人びとの意識を明らかにし、鉄道路線図以外の地図を補足的に取り上げることで、現代社会における地図の位置づけについても考察を加えた。
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Research Products
(1 results)