2008 Fiscal Year Annual Research Report
渓流環境への適応をモデルとした植物の適応進化機構のゲノムレベルでの解明
Project/Area Number |
08J03796
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三井 裕樹 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 適応進化 / 遺伝子浸透 / 種間交雑 / 自然選択 / 渓流帯 / 林床 / 光合成効率 / マイクロサテライト |
Research Abstract |
新しい種が形成され、生物多様性が生み出される主要な原動力は、さまざまな環境への適応と進化であると考えられる。本研究では、林床環境から隣接する渓流帯への植物の適応進化プロセスに着目している。この実験系を用いるメリットは、まず適応形態(葉の細長さ、厚さ等)と、それをもたらす自然選択(水流、光強度等)が非常に明瞭であることが挙げられる。さちに、ごく近縁種間、または種内で適応的な表現型の変異が見られるため、妥当な比較生態、遺伝学的解析が可能である。本年度は、屋久島に分布するキク科のホソバハグマ(渓流型)、キッコウハグヤ(林床型)、さらに両種の自然雑種を用いて、それらの生態的・遺伝的分化を解析した。具体的には、まず生存率に大きな影響を与える形態(葉の構造)と、生理特性(光環境への応答として光合成効率)を比較解析し、種間での有意な形態的、生理的分化と、種間雑種の中間的な形質を明らかにした(第8回日本植物学会口頭発表)。さらに、個体レベルで遺伝子タイプ決定を可能とするマイクロサテライトDNAマーカーを開発し(Mitsui et al.2008)、自然集団の交雑帯における遺伝的構成を解析した。その結果、ホソバハグマとキッコウハグマは定期的に種間交雑を起こし、雑種が形成されているが、雑種はF1またはF2世代がほとんどであることが分かった。生態的、遺伝的解析によって、中間的な形質の雑種は、渓流帯、林床の自然選択によって淘汰されてしまうことで、種間の遺伝子浸透が制限され、顕著な分化がもたらされていることが示唆された。以上の内容をまとめ、第8回日本植物分類学会で口頭発表した。現在、進化生物学の著名な学術雑誌であるEvolutionへの投稿準備を進めている。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article]2009
Author(s)
Tomomi Dan, Hajime Ikeda, Yuki Mitsui, Yuji Isagi, Hiroaki Setoguchi
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Journal Title
Conservation Genetics (印刷中)
Peer Reviewed
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