2010 Fiscal Year Annual Research Report
渓流環境への適応をモデルとした植物の適応進化機構のゲノムレベルでの解明
Project/Area Number |
08J03796
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三井 裕樹 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 種分化 / 適応進化 / 生殖隔離 / 渓流沿い植物 / 遺伝子流動 / 分岐年代 / 集団遺伝学 / 林床 |
Research Abstract |
本年度は、屋久島の渓流沿い植物ホソバハグマとその近縁種で林床に生育するキッコウハグマ(キク科モミジバグマ属の多年生草本)を用いて、両者の雑種を含めた集団の遺伝構造、ハビタット分化、形態分化を総合的に解析した。その結果、これらの2種は自然集団で交雑を起こしているにもかかわらず、対照的な渓流帯・林床環境の自然選択圧によって、顕著な形態的・遺伝的分化が維持されているという、「生態的な生殖隔離」の存在を明らかにした。この内容は、生物の進化に関する重要な知見であると評価され、当該分野において著名な国際誌であるEvolution誌に掲載された。 続いて、渓流種と林床種の生態的分化の過程を、集団遺伝学の集団分化モデルを用いて解析した。屋久島固有の渓流種ホソバハグマとその姉妹種キッコウハグマ、さらに、沖縄島固有の渓流種ナガバハグマとその姉妹種オキナワバグマにおける分岐年代と遺伝子流動を推定し、渓流種が最終氷期あるいは後氷期に、隣接する林床種から適応的に進化した可能性を示した。本研究は、結果的に当初の目標であった適応進化のゲノム基盤を解明するまでには至らなかったが、本研究の成果は渓流-林床というような環境勾配の中で、植物が生態的要因によって急速に種分化を起こす可能性を示すものであるとして高く評価された。一連の成果は全て関連学会で発表し、投稿論文として受理まなは掲載される見込みである。
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Research Products
(9 results)