2009 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体のオーバードープ領域におけるナノスケール相分離の機構解明
Project/Area Number |
08J03824
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田邉 洋一 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / ナノスケール相分離 / 磁化率 / 比熱 |
Research Abstract |
これまで、La_<2-x>Sr_xCuO_4において、磁化率測定から観測した超伝導領域と非超伝導領域へのナノスケール相分離に関して、相分離の銅酸化物高温超伝導体における普遍性と、Srを置換することによる結晶の乱れと相分離の関係を明らかにすることを目的として、前年度に引き続いて、元素置換ではなく酸素量によってホール濃度を制御するBi_<1.76>Pb_<0.36>Sr_<1.88>CuO_<6+δ>の単結晶を用いた比熱と磁化曲線の測定を行った。これまでの、La_<2-x>Sr_xCuO_4における研究から、相分離の有無を調べる上で、超伝導状態における残留電子比熱係数の測定が非常に有効であることが明らかになっていることを踏まえて、今回、比熱の測定を新たに加えた。その結果、ホール濃度の少ないアンダードープ領域とホール濃度の多いオーバードープ領域において、電子比熱を0Kに外挿して求めた残留電子比熱係数が有限の値を示すことを観測した。超伝導状態において残留電子比熱係数が存在することは、超伝導状態においても常伝導電子が存在することを示していることから、超伝導領域と非超伝導領域に相分離していると理解できる。また、磁化曲線の測定からは、オーバードープ領域において、第2ピーク効果を観測した。これまでの我々によるLa_<2-x>Sr_xCuO_4における磁化曲線の測定から、第2ピーク効果の出現が、ナノスケール相分離が実現していると考えると理解できることが明らかになっている。この結果を踏まえると、Bi_<1.76>Pb_<0.36>Sr_<1.88>CuO_<6+δ>において観測した第2ピーク効果もLa_<2-x>Sr_xCuO_4と同様にナノスケール相分離の実現を示唆している可能性がある。以上、今回の結果を踏まえると、La_<2-x>Sr_xCuO_4におけるナノスケール相分離は、Sr置換による結晶の乱れの影響によるものではなく、銅酸化物高温超伝導体に普遍的な性質である可能性がある。
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Research Products
(6 results)