2008 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体のオーバードープ領域におけるナノスケール相分離の機構解明
Project/Area Number |
08J03824
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田邉 洋一 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / オーバードープ領域 / ナノスケール相分離 / 磁化率測定 |
Research Abstract |
これまで、La_<2-x>Sr_xCuO_4オーバードープ領域において、磁化率測定から観測した超伝導領域と非超伝導領域へのナノスケール相分離に関して、オーバードープ領域での相分離の銅酸化物高温超伝導体における普遍性と、Srを置換することによる結晶の乱れと相分離の関係を明らかにすることを目的として、元素置換ではなく酸素量によってホール濃度を制御するBi_<1.76>Pb_<0.36>Sr_<1.88>CuO_<6+δ>の単結晶を用いた磁化率測定を行った。研究計画書においては、CuO_2面を2枚有するBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>を用いた実験を計画していたが、Bi_<1.76>Pb_<0.36>Sr_<1.88>CuO_<6+δ>がLa_<2-x>Sr_xCuO_4同じ1枚のCuO_2面を持つこと、酸素量を変えることで到達できるホール濃度領域がより広いことを踏まえて、Bi_<1.76>Pb_<0.36>Sr_<1.88>CuO_<6+δ>を用いた実験を行った。なお、測定に用いた単結晶は、我々のグループで過去に育成したものを用いた。その結果、オーバードープ領域において、磁場中冷却下において下部臨界磁場以下の磁場を印加した場合、最低温度2Kでの磁化率の絶対値がホール濃度の増加とともに減少することを観測した。この磁化率の絶対値は超伝導体積分率を反映することから、Bi_<1.76>Pb_<0.36>Sr_<1.88>CuO_<6+δ>のオーバードープ領域において、超伝導領域と非超伝導領域への相分離が実現している可能性が高いと考えられる。このことから、La_<2-x>Sr_xCuO_4のオーバードープ領域で観測した相分離は、Srを置換することによる結晶の乱れの影響によるものではなく、銅酸化物高温超伝導体に普遍的な性質である可能性がある。
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Research Products
(10 results)