2008 Fiscal Year Annual Research Report
水素を含むナノカーボンの生成崩壊過程の分子動力学研究
Project/Area Number |
08J03829
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 篤史 Aichi University of Education, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分子動力学 / 炭素 / グラファイト / プラズマー壁相互作用 / 炭素ダスト / 星間分子 / 層間相互作用 / 化学スパッタリング |
Research Abstract |
1、最初に、グラファイト系の分子動力学に必要な層間相互作用ポテンシャルを開発した。現存の炭素系の相互作用ポテンシャルモデルは、共有結合を単位とした短距離力のみを表現しているため、分子間力に支えられるグラファイトの層構造は正しく再現することが出来なかった。今回、コーン型の特殊なカットオフ関数を用いて層間相互作用のモデルを開発することで、層構造のグラファイトを扱える様になった。 2、これを用いて、グラファイトの破壊過程の表面構造依存性を明らかにした。グラフェン面と平行な(0001)表面に水素原子を照射すると、層間相互作用を導入しなかった過去の研究ではグラファイトがアモルファス化してしまったが、今回は、グラフェン層が一枚ずつ剥がれていくという、より現実に即した現象を発見した。続いて、アームチェア端およびジグザグ端が露出した表面では、前者からはC2H2が、後者からはH2が特に生成しやすいことが明らかになった。これにより磁場閉じ込め型核融合炉における炭素壁からのC2H2の発生原理を初めて明らかにした。 3、一方、生成過程の研究として、宇宙空間における炭素ダスト生成の様子を調べた。分子動力学から、C2やCHのような小さな炭化水素が集合すると、カーボンチェーンを経由して、最終的に六員環を多数持つシート状の分子ができあがることを明らかにした。これは、近年の近赤外観測において未同定赤外バンドの放射源と考えられているPoly Aromatic Hydrocarbonの形成過程を明らかにしたものであると考えられる。
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