2008 Fiscal Year Annual Research Report
相模湾産コケムシ類の多様性とbioconstructorとしての役割
Project/Area Number |
08J03856
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
広瀬 雅人 Hokkaido University, 大学院・理学院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | コケムシ / 相模湾 / コケムシ礁 / 基質資源 / 多様性 / main frame builder / アミコケムシ科 |
Research Abstract |
目的・内容 本研究は,「相模湾における130年間のコケムシ相の変遷」と「コケムシ礁の基質資源としての役割」を解明することで,コケムシ群集を基質資源とした海産生物相の多様性研究の足がかりを築くことを目的としている. 相模湾で100年以上前に採集されたコケムシ標本の多くは海外の博物館に手付かずの状態で所蔵されているため,平成20年度はそれらの標本観察と同定,カイメン・腕足動物標本中からの新たなコケムシ群体の探索,さらに標本調査から明らかとなった相模湾のコケムシ礁を他海域のものと比較することを目指した. 調査博物館:ゼンケンベルク自然史博物館,ミュンヘン動物標本収蔵館,ストラスブール動物学博物館,昭和記念資料館 このほか,近年の調査で得られたコケムシ標本の観察・同定も進める一方,東京大学海洋研究所の相模湾・小笠原海域での研究航海に参加し,新たな標本を多数得た. 結果・意義 これまでに総数約600点の標本から800以上のコケムシ群体が得られた.カイメン・腕足動物標本163点の調査では37点から80以上のコケムシ群体が新たに得られた.これらの結果から,相模湾のコケムシ礁は他海域のコケムシ礁に比べて礁形成に関わるコケムシ種が多様であることがわかった.特に礁形成時の主要な骨格となる"main frame builder"と呼ばれる大型種では,最大規模のコケムシ礁として知られるニュージーランドの6種に対して相模湾は20種という高い多様性を示した. このように多様性の高い現生コケムシ礁はこれまで知られておらず,main frame builderの約半数を占めるアミコケムシ科はその分類の難しさから研究が進んでいない分類群でもある.そのため本研究成果は,コケムシ分類学の発展とコケムシ礁の基質資源としての役割解明の両面から,コケムシを主体とする海産生物相の多様性研究の重要な礎となることが期待される.
|
Research Products
(4 results)