2008 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ複合系での軌道、スピン、電荷の競合が起こす電子相関現象の研究
Project/Area Number |
08J03880
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阪野 塁 The University of Tokyo, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 電子相関 / 量子ドット / 電気伝導 / 熱起電力 / 近藤効果 |
Research Abstract |
1.超伝導電極、常伝導電極、量子ドットの複合系で、超伝導状態と不純物状態の競合現象が観測可能になった。実験グループに理論的なサポートを行い、この電子相関現象の競合による、電子状態と輸送特性について明らかにした。 2.本研究では、ナノサイズ系の電子相関や干渉効果と熱起電力の関係を明らかにし、系の高いデザイン性を生かすことで、新しい高効率の熱電デバイスを探究することを目的とした。具体的には、ナノ複合系の近藤効果やFano干渉効果による熱電特性を、場の理論的手法やFermi流体論などを用いることで、理論的に明らかにした。 (1)通常の埋め込み型量子ドットやT字型量子ドット系での低温における熱起電力の表式を解析的に得た。これらの系の線形熱起電力はドット内にCoulomb斥力が働くと、電子相関により、埋め込み型、T字型いずれの場合でも熱起電力は強く増幅されることがわかった。さらに、T字型の量子ドット系では、Fano干渉効果により、さらに強く熱起電力が増幅されることがわかった。 (2)埋め込み型量子ドット系の軌道自由度により変調された近藤効果による熱起電力も明らかにした。この熱起電力をコンダクタンスから得られた情報と相補的に組み合わせることで、詳しい電子状態を明らかにすることが可能となった。 (3)ABリングに埋め込まれた量子ドットの系の解析のため、通常の不純物アンダーソン模型のBethe ansatzの拡張をおこない、このABリング系の近藤問題に対する厳密解を整備した。この系でも干渉効果による透過係数の抑制などにより、強い熱起電力が観測される。 以上のように、電子相関や干渉効果は熱起電力を強く増幅することを明らかにした。これにより、ナノデバイスは高効率の熱電素子としての候補となり得ることを指摘した。
|
Research Products
(2 results)