2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ複合系での軌道、スピン、電荷の競合が起こす電子相関現象の研究
Project/Area Number |
08J03880
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阪野 塁 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 量子ドット / 近藤効果 / 非平衡 / 量子干渉効果 |
Research Abstract |
量子ドット系の近藤効果とその輸送現象について、次の2点について解析を行った。 (1)アハラノブボーム量子干渉計の近藤効果特性の解析 アハラノブボームリングに埋め込まれた量子ドットの干渉効果は平衡系で、量子ドットの準位位置と線幅に繰り込まれることがわかった。このことを利用して、ドットの電子状態を有効模型にマップすることで、ベーテ仮設による厳密解を適用することを可能として、系のエネルギースケールである近藤温度の厳密な計算を行い、干渉効果特性についての物理的な意味を明らかにした。 このエネルギースケールは、この系の電子相関の指標となるため、今後の理論、実験研究の大きな指針となる。 (2)低バイアス定常状態の非平衡近藤効果による輸送の量子揺らぎの解析 非平衡輸送に現れる電子相関揺らぎ特性を、ショットノイズと完全計数統計を利用して解析を行った。特に繰り込まれた摂動論や繰り込み群による数値計算、厳密解、フェルミ液体論などの場の理論的手法を利用して、信頼の高い解析を行うことで、電流揺らぎに現れる電子相関の普遍的性質を明らかにした。具体的に揺らぎの目安であるファノ因子の、任意のクーロン斥力と軌道縮退に対する普遍的な表式を明らかにした。さらに、計数統計を用いることで、電流揺らぎの確率分布を導出した。 本研究では非平衡定常状態の電子相関の厳密な取り扱いを、行った。これはより非平衡性が高い系にある普遍性の調べるため研究の端緒となる研究である。さらに、近年の実験技術の向上により、ナノ系のノイズ測定が活発に行われ始めている。本研究はその研究に重要な指針を与えるものである。
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Research Products
(11 results)