2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規に発見した聴覚皮質腹尾側領野の機能に関する研究
Project/Area Number |
08J03900
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
西村 方孝 熊本大学, 医学教育部, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 聴覚皮質 / 光計測 / 領野同定 / ベルト領域 / 追従性 / 変調音 / トノトピー |
Research Abstract |
一昨年度に本研究で作成した波形合成ソフトウェアや音響システムでは、音響システムの逆伝達関数の推定精度に問題があり、周波数変調(FM)音を任意の音圧で合成することが困難であった。しかし振幅変調(AM)音のみでは当該領野の特徴付けが不十分であることが明らかになったので、FM音を精度よく音響システムから出力することが必要となった。より高精度に音響システムの逆伝達関数を推定するために、フーリエ信号から人工的に合成された白色雑音を用いて1,000回程度の加算平均により伝達関数を推定した。これにより高精度にAM音そしてFM音が合成できるようになったので、それらの音を用いて一次聴覚野(AI)、背尾側領野(DC)、腹吻側領野(VR)、腹尾側領野(VC)の活動を光計測法により計測したが、FM音に関しては、主に始まりの周波数の音に対する応答が支配的で、顕著な応答特性の差は見られなかった。AM音に関しては、AI、DC、そしてVRの吻側部で高い追従性が見られたものの、VCでは高い追従性が見られなかった。追従性はWelch法により評価した。VCの応答性をDC周辺のベルト領域内の領野群と比較するため、短い純音刺激を用いてそれら領野の同定を行った結果、応答の周波数局在性(トノトピー)を有しない背尾側ベルト(DCB)と腹尾側ベルト(VCB)、そしてそれら領野の中間に位置し、DCと同じ向きのトノトピー勾配を有する後側領野(P)が実験した全ての動物で見られた。DCB、VCBにおいてはAM音に対しての追従性は低く、PにおいてはAI、DCと並ぶ追従性を有していることが明らかになった。 そのPの追従性はVCのそれよりも高かった。以上の結果を踏まえると、音の時間的情報の一つである包絡線情報の抽出にはコア領域内のAI、DC、そしてベルト領域内のPが積極的に関与し、VCは非時間的情報の抽出に関与している可能性が示唆された。
|
Research Products
(2 results)