2008 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子導入技術を基盤とした細胞医薬創製法の確立と細胞療法への展開
Project/Area Number |
08J03901
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金川 尚子 Osaka University, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 癌免疫療法 / 再生療法 / 遺伝子導入 / ターゲティング / Cell Delivery System / 分化誘導 / 細胞医薬 |
Research Abstract |
本研究の目的は、医薬品としての細胞(細胞医薬)の効率的な創出技術と目的組織への標的化法の開発である。本年度は、神経幹細胞に対する有用な遺伝子導入用ベクターを用いて、分化誘導因子を発現させることによる膵β細胞への分化誘導法の確立を試みた。さらに、一本鎖抗体(scFv)発現系を応用して癌細胞特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)の体内動態を改善する方法論の構築にも取り組み、以下の成果を得た。 1.膵β細胞分化の重要な転写因子であるPdx-1、MafA、Beta2分子を発現するアデノウイルスベクターを作製した。これらベクターを用いて、マウス胎仔由来神経幹細胞に遺伝子導入したところ、わずか7日後に膵β細胞マーカーの発現レベルおよび分化誘導効率が顕著に上昇した。さらに、この分化細胞は、低グルコース条件と比較して、高グルコース条件でインスリン分泌量が顕著に増加した。 2.腫瘍血管内皮細胞に高発現している血管内皮増殖因子受容体(flk1)を標的分子として選択し、抗flk-1 scFvを発現するベクターを用いて、細胞表面に抗flk1 scFvを提示するCTL(scFv-CTL)を創製した。このscFv-CTLは、in vivoにおいて腫瘍組織に高率に移行し、高い腫瘍集積性を反映した顕著な腫瘍増殖抑制効果が認められた。 これまでに、細胞を用いる治療法(細胞療法)が夢の治療法として注目されてきた。しかしながらこの細胞療法は、難治性疾患に対する新規治療戦略としての確立が待望されている一方で、細胞医薬を十分に確保することが課題であったとともに、その細胞医薬に対して治癒率を高めるために必要な機能のみを効率よく付与または制御することが極めて困難であった。したがって、上記の研究成果は、短期間により多くの細胞医薬を創製する方法論を確立するとともに、遺伝子工学的創薬テクノロジーを駆使した細胞医薬への標的指向性の付与に成功したものであり、細胞療法の臨床応用実現に大いに貢献する成果と考えられる。つまり、医療現場に迅速に還元できる極めて重要な基盤研究であるとともに、社会的価値の高さが研究の特色として挙げられ、今後のさらなる発展が期待される。
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Research Products
(10 results)