2008 Fiscal Year Annual Research Report
紫外線が海産魚類の卵と仔稚魚の生き残りに及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
08J03906
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福西 悠一 Kyoto University, フィールド科学教育研究センター, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 紫外線 / 耐性 / タイ / カレイ / フグ / 個体発生 / 黒色素胞 / 適応 |
Research Abstract |
1.天然魚と飼育魚の紫外線耐性 マダイとクロダイの天然稚魚を採集し、両者の紫外線耐性を比較した所、飼育実験により示された、より浅い紫外線の強い所に生息しているクロダイの方がマダイよりも紫外線耐性が高いという傾向が天然魚にも存在することが明らかになった。また、天然魚と飼育魚をマダイとクロダイそれぞれについて比較した所、マダイでは両者の間に差はみられなかったが、クロダイは、飼育魚よりも天然魚の方が高い紫外線耐性を持つことがわかった。このことから、クロダイは、天然海域において稚魚になるまでに紫外線耐性を高める何らかのメカニズムを備えており、生息域の強い紫外線に適応していると考えられた。 2.紫外線適応の一般性の検証 ホシガレイの仔魚は黒色素胞を多く持ち、水深3m以浅の浅瀬へ着底することが知られている。一方ババガレイの仔魚は透明に近く、水深12m以深に着底する。また、クサフグは波打ち際で産卵するのに対し、トラフグは水深10-30mで産卵を行い、卵は海底に沈着する。そこで、本実験ではホシガレイのほうがババガレイよりも、クサフグのほうがトラフグよりも紫外線耐性が強いという仮説をたて、マダイとクロダイの実験と同様に卵から飼育を行い、各発育段階で4つのUV-Bレベルに4時間暴露させ、24時間後の生残率を算出した。その結果、カレイ目では、浅海域への接岸過程にある屈曲仔魚〜変態期仔魚において、ババガレイよりもホシガレイの方が紫外線耐性が強い傾向がみられた。フグ目では、生息水深に明瞭な差がある屈曲前仔魚以前において、トラフグよりもクサフグの方が紫外線耐性が有意に高かった。一連の結果より、マダイとクロダイにみられたような、「紫外線の強い浅い海域に出現する種ほど紫外線に適応している」という傾向が、魚類全般に共通する普遍的な理論であることが示唆された。
|