2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代演劇における<舞台上の存在>論―身体/言葉の関係と<劇的なもの>の変容
Project/Area Number |
08J03987
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中筋 朋 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 演劇学 / 現代演劇 / フランス |
Research Abstract |
本研究の領野は、フランス現代演劇と演劇理論にある。演劇において観客が舞台上に見る人間が、登場人物にも役者にも還元できないものであるということから<舞台上の存在>という審級を措定し、その存在の特異性に注目するところから出発している。この<舞台上の存在>は、役者や登場人物をめぐる思索を深めてくれるにとどまらず、現代における劇のあり方の象徴とも言える性質を持っており、演劇というひとつの<出来事>の本質を示してくれる鍵となっている。 今年度は、昨年度の分析から得られた結果をもとにあらたな劇のあり方をひとつの理論としてまとめるとともに、劇の実践の場(演出家と役者の関係・俳優訓練など)へと分析の領野を拡げていくことに成功した。 まず、博士論文の前半を為す予定である理論部によって、研究の射程がより明確になった。つまり、<舞台上の存在>についての思索が、思考の身体性を媒介にすることによって、芸術という営み自体の独自性を示していく可能性が今年度の研究によって明確に打ち出された。 また、あらたな視点の導入についてはフランスでの資料集めに負うところが大きい。今年度は、フランスで近代演出の黎明期の資料を集め、演劇における身体論を扱った学会(パリ第3大学)に出席し意見交換することで、<舞台上の存在>という個体の特異な身体性を明らかにする基盤を得てきた。また、フランス滞在中には、現代演劇における登場人物と役者について考えるうえで象徴的な存在であるV・ノヴァリナの演出助手の方に何度か話を伺う機会を得た。 2010年度は、まず5月におこなわれる近現代演劇研究会(大阪大学)で近代演出の黎明期における役者像についての発表をおこなう。次に、フランスでのインタビューの結果も参照したV・ノヴァリナについての論文が、9月に発行される『仏文研究』(京都大学)に掲載される予定である。
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