2008 Fiscal Year Annual Research Report
海藻の『淡水』・『汽水』への適応に関する分子進化学的研究
Project/Area Number |
08J04039
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
市原 健介 Hokkaido University, 大学院・理学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 淡水適応 / 緑藻 / アオサ属 / 適応進化 / Ulva limnetica / cDNAサブトラクション |
Research Abstract |
本研究の最終的な目標はアオサ属における海水域から汽水・淡水域への適応進化の分子機構を総合的に理解することである。実験は沖縄県で発見したアオサ属に含まれる唯一の淡水産種であるUlva limneticaを用いて行なっている。これまでの実験から本種は淡水産ではあるが、淡水・海水両条件で良好に生育することが確認できている。初年度は淡水条件下で特異的に発現量が増加する遺伝子の網羅的な単離を目的とし、一次スクリーニングとしてcDNAサブトラクション法を行なった。さらに単離された候補遺伝子については二次スクリーニングとしてそれぞれRT-PCRを行い発現の確認を行なった。 cDNAサブトラクション法では淡水移行後の遺伝子の発現カスケードが推定しやすいように短期応答(淡水移行後1h,12h,24h)、長期応答(3日間、7日間)の2つのサブトラクトcDNAを合成した。合成したサブトラクトcDNAをTAクローニングした結果、短期応答から269、長期応答から29、合計298の遺伝子がクローニングできた。さらに二次スクリーニングとして現在RT-PCRを行い、発現の確認を行なっている。これまでに約50の遺伝子について確認し、その内(1)淡水条件でのみ発現が見られる遺伝子が5個、(2)海水条件でも発現が見られるものの淡水条件移行後に明らかに発現量が増加しているものが11個あることが確認できている。(1)には浸透圧調整に用いられる適合溶質を分解するような酵素に相同性が高いもの、イオン輸送タンパクに相同性が高いもの等が含まれており、(2)には単糖の輸送に関わるもの、分子シャペロン等が含まれていた。このことから淡水への適応の際にはイオン輸送、適合溶質の分解、分子シャペロンによるタンパク質の機能維持などが重要な役割を担っていることが示唆された。今後はこれらの遺伝子について海産種、汽水産種でのホモログの探索、発現の確認などを行っていく予定である。
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Research Products
(1 results)