2008 Fiscal Year Annual Research Report
法時間論--法による時間的秩序、および法内在的時間構造に関して
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08J04049
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
吉良 貴之 Hitotsubashi University, 大学院・法学研究科, 日本学術振興会特別研究員PD
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Keywords | 法時間論 / 現在主義 / 正統性 / 法的現在主義 / 時間的秩序 / 予見可能性 / 事実認定 / 法と映画 |
Research Abstract |
2008年度には、研究課題の基礎的・総論的部分の枠作りに精力を傾注した。英米の分析形而上学における時間論の議論状況を精査し、特に現在主義(presentism)と呼ばれる立場を法理論に応用する「法的現在主義(legal presentism)」によって、法概念・法実践の適切な記述が得られるという見通しを得ることができた。この年度には特に、研究課題副題前半の「時間的秩序」形成における法の役割と正統性(legitimacy)の関係を英米の社会学関連の時間論とあわせて考察し、法のはたらきにおける時間性や、共通時や暦をめぐる政治のあり方などを明らかにすることに努めた。そして、これは2009年度に主に取り組む予定の、法概念論としての「法内在的時間構造」と、正統性という概念を軸にして密接に関連するものであることを確認した。 上述の研究成果の一部を2008年度「日本法哲学会・分科会」にて「法時間論--法による時間的秩序、法に内在する時間構造」と題して発表し(2008年11月)、同題名の論文を『法哲学年報2008』に投稿した。法と時間の関係を考察するというテーマ設定は類例が少ないため一定の独創性が評価され、2009年1月に査読を通過した。また『創文』2008年9月号に小文「刑事裁判における「過去」と現在主義--映画「それでもボクはやってない」を素材に」を執筆した。これは一般向けのコラムであるが、「法時間論」の実定法上の含意をわかりやすく述べるものとして一定の意義があると考える。
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Research Products
(2 results)