Research Abstract |
1.放射性ナノシリカ粒子を曝露したマウスにおけるナノ粒子の体内動態の検討 本研究では,放射性ナノシリカ粒子懸濁液(粒径37nm)をマウスに点鼻投与し,嗅神経を介した嗅球や脳への移行量を液体シンチレーションカウンターにて定量した。その結果,最大で投与量の3.6%が嗅球で,投与量の2.2%が脳で確認された。一方,放射性シリカ粒子(粒径11nm,130nm)尾静脈投与実験による血中経路での嗅球や脳への移行率は,嗅球では最大で投与量の0.03%,脳では0.16%であった。このため,嗅神経経路の方が血中経路よりも移行率が大きくなった。したがって,中枢神経系へのナノ粒子の移行は血流経路よりも嗅神経経路の方が寄与が大きいことが明らかとなった。この結果は,嗅神経経路がナノ粒子の中枢神経系への主要な移行経路である可能性があり,ナノ粒子の吸入曝露がアルツハイマー病などの神経疾患と結びつく可能性が示唆された。 2.PC12細胞を用いたナノ粒子の神経細胞内への侵入メカニズムに関する検討 本研究では,ナノ粒子の粒径や表面修飾,曝露時間の違いが神経細胞内(PC12細胞)への侵入量に影響を及ぼすかを検討した。はじめに,粒径の異なる蛍光ポリマー粒子(粒径22nm,100nm,1000nm)を曝露した結果,粒径の小さい粒子ほど細胞内に侵入した粒子数が増加した。次に,表面修飾の異なる粒径10~20nmの量子ドット(カルボキシル基修飾粒子,アミノ基修飾粒子,表面修飾なしの粒子)を曝露した結果,カルボキシル基修飾粒子が最も細胞内に侵入した。このことから,鼻腔に侵入した粒子の粒径,および粒子表面の組成がナノ粒子の嗅神経への侵入に関与していることが示唆された。さらに,放射性シリカナノ粒子(粒径58nm)をPCI2細胞に曝露し,経時的な細胞内侵入量の変化を検討した。その結果,細胞内への侵入量は曝露からの経過時間とともに増加した。したがって,ナノ粒子の鼻腔内での滞留性も嗅神経への侵入に関与すると考えられた。
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