2008 Fiscal Year Annual Research Report
EBウイルス関連T/NK細胞増多症の細胞生存シグナルの解明と治療法の開発
Project/Area Number |
08J04161
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
石川 千恵 University of the Ryukyus, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / 癌 / 免疫学 / 薬剤反応性 |
Research Abstract |
1ピストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)によるEBウイルス(EBV)関連T/NK細胞増多症の治療の可能性:EBV関連T/NK細胞増多症ではEBVがT細胞またはNK細胞に感染しており、悪性リンパ腫の発症などを引き起こす。感染細胞は、抗原性の低い限られた蛋白質しか発現していないため、EBV特異的細胞傷害性T細胞(CTL)から逃避しうる。現在、T/NK細胞増多症の確立された治療法はない。HDACIは抗腫瘍活性をもつ薬剤で、EBV感染B細胞に対する細胞増殖抑制効果も報告されている。そこで、EBV関連T/NK細胞増多症の治療薬としてHDACIの可能性を検討した。HDACIとしてFR901228を用いた。EBV感染T/NK細胞株においてFR901228は濃度依存性に細胞増殖を抑制した。その効果はNK細胞株よりT細胞株の方が顕著であった。また、細胞周期停止およびカスパーゼ活性の上昇によるアポトーシスを誘導した。細胞周期関連蛋白質としてサイクリンD2、CDK4/6を、アポトーシス関連蛋白質としてBcl-xL、XIAP、cIAP2の発現を減少させた。これらの遺伝子の転写を制御する転写因子NF-kBおよびAP-1の恒常的活性化がEBV感染細胞株で認められ、FR901228により両転写因子の活性が抑制された。すなわち、これらの生存シグナルを抑制することでFR901228はEBV感染T/NK細胞株の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導すると考えられた。さらに、FR901228はEBV感染T/NK細胞株のLMP1発現を誘導した。この結果から、生体内でのウイルス特異的CTLによる感染細胞傷害活性を増強する効果も期待できると考えられた。本研究からEBV関連T/NK細胞増多症に対する新規治療薬としてHDACIが有用であることが示唆された。 2EBV感染によるIL-13遺伝子発現制御機構:IL-13は炎症性サイトカイン産生を抑制するTh2サイトカインであり、ホジキンリンパ腫細胞やHTLV-1感染T細胞において、IL-13の恒常的発現と発癌への関与が報告されている。そこで、EBV感染細胞株において検討したところ、IL-13の恒常的発現が確認された。EBV感染細胞株においてはIL-13レセプターの発現はなく、IL-13はパラクライン機構で作用すると考えられた。また、EBV感染やLMP1遺伝子の導入により、IL-13発現がNF-ATとAP-1活性化により誘導されることを明らかにした。IL-13は抗腫瘍免疫を抑制することが知られており、EBVによる発癌において感染細胞の生存維持に重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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Research Products
(25 results)