2009 Fiscal Year Annual Research Report
公共空間論の新地平―ハンナ・アーレントの思想における難民問題と「権利をもつ権利」
Project/Area Number |
08J04210
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
篠原 雅武 Osaka Prefecture University, 人間社会学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 権利をもつ権利 / アーレント / 公共空間 / 政治的なもの / 都市空間 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画書の三年次の内容(新しい公共空間論の構想)にあたる研究をおこなった。これは、アーレントの公共空間論が現代の状況においてどういう意義をもち、どういう展開の可能性があるのか、すなわちアーレントが問題とした公共空間がどういうものであり、現代においてはそれがどういう形をとりうるのかをかならずしもアーレントの著作の読解にこだわらず考察を深め、公共空間をめぐる著作の刊行のメドをつけることに帰着した。今年度は、具体的な成果としては刊行できなかったが、以上の成果の中間的な論考として、雑誌『Vol』(以文社)に発表した(「空間の構築について」)。これは2010年の5月に刊行される。また、千葉大学工学部建築学科での招待講演(「過程としての公共空間」、2009年6月)で、公共空間の概念を、現代の都市の状況との関連で考える視点を提起したが、ここでは新しい公共空間を考えるうえで重要な視点が何であるかを報告した。以上の論考と報告では、公共空間は、定まった空間ではなく、さまざまな人間活動とのかかわりにおいてたえず形成されていくものであること、この形成にむけた動きが停滞するならば公共空間は荒廃した雰囲気に満たされるという直観的な認識を踏まえ、理論的な理解のための枠組みを提起した。この論考と報告を発端に、秋以降は公共空間について多角的な研究を行った。これをもとにして今のところは著作の草稿を一段落させたところだが、来年度は、刊行に向けて整理していく予定である。なお、三年ほどまえから取り組んできた翻訳作業(マイク・デイヴィスの『スラムの惑星』)のメドもたち、これは2010年4月末に刊行される。
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Research Products
(2 results)