2009 Fiscal Year Annual Research Report
京都学派周辺の禅哲学とその中での西田哲学の思想的独自性――道元解釈を手引きとして
Project/Area Number |
08J04211
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
杉本 耕一 Kansai University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近代日本哲学 / 京都学派 / 西田幾多郎 / 仏教思想 / 道元 |
Research Abstract |
本年度の研究は、二つの領域に大別される。第一に、研究課題に直接に取り組む研究として、(1)近代における道元解釈の研究。第二に、その問題の背景に立ち入り、問題の所在を明らかにするための(2)京都学派の禅哲学をめぐる諸論点の考察。 (1)の主要な成果としては、口頭発表「道元の「行」と田辺元の「行為」」がある。本発表では、臨済禅を背景とした京都学派の禅哲学に対して、道元を参照する田辺の禅哲学を、有限相対的な人間の「行為」に立脚した禅哲学として特徴づけた。さらに、田辺の「行為」の立場と道元の「行」の思想とについて、相違点を踏えた上で交錯するところを探り、有限な現実の世界に足場を置きつつ「絶対」を探究する禅哲学のあり方の可能性を検討した。また、印刷中の論文「衛藤宗学と京都学派の哲学-京都学派の禅哲学の再考のために」では、曹洞宗の近代的宗学の大成者である衛藤と京都学派との立脚点の共通性を示し、両者の思想を、禅仏教の近代的解釈の二つのあり方として共通の場所で論ずるための端緒を開いた。以上の研究により、京都学派の禅哲学とは別のさまざまな禅哲学の可能性を見通すことができ、京都学派の禅哲学の再考への地盤が整った。 (2)の主要な成果としては、論文「戦時期京都学派における宗教哲学と時局的発言-西谷啓治を中心に」がある。本論文では、第二次大戦期の西谷の時局的発言と同時期の宗教哲学的思索との関連を探ることを通して、西谷の禅哲学め思想上の問題性を指摘した。また、刊行予定の論文「京都学派の仏教的宗教哲学から「倫理」へ」は、ほぼ同じ問題を、西洋における京都学派研究の動向を参照しながら追求したものである。これらの研究においては、京都学派の禅哲学の問題性の解決への鍵として、道元禅に注目することの意義をも提示した。
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Research Products
(7 results)