2010 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類における頭蓋の三次元筋骨格モデリングと咀嚼機構進化の解明
Project/Area Number |
08J04222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小薮 大輔 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 頭骨 / 形態進化 / 変異 / 生態分化 / 三次元幾何学的形態測定法 / アロメトリー / モジュール性 |
Research Abstract |
コロブス亜科霊長類の顔面頭蓋には顕著な種間形態変異が存在することが知られてきたが,その形態学的多様性の適応的意義は十分に解明されてこなかった。一方、近年の生態学的研究の進展によってコロブス亜科の食性は種間で顕著に変異することが明らかになってきた。そこで,我々はコロブス亜科の顔面頭蓋における形態変異と食性変異のパターンを検討し,形態変異は食性に対する適応進化を反映するかを検証した。その結果,若葉食者,成熟葉食者,種子食者,果実食者,雑食者それぞれに特徴的な形態学的パターンが系統とは独立に検出された。これにより顔面頭蓋形態の多様性は各食物資源への適応進化に強く影響されて生じた可能性が示唆され、American Journal of Physical Anthropology誌にて2010年に原著論文を発表した。一方、京都大学霊長類研究所、ベルギー王立中央アフリカ博物館、チューリッヒ大学古生物学博物館にて標本調査を行い、接触型三次元形状デジタイザーを用いて50種800個体におよぶ霊長類種の頭蓋骨および下顎骨の詳細な三次元座標を取得、集積した。取得されたデータから各種の頭骨の三次元モデルを構築し、幾何学的形態測定法を用いて、霊長類において頭骨が系統発生学的、進化生態学的文脈のなかでどのように多様化してきたのかを定量的に記述しつつある。さらに、機能形態学的な観点からコロブス亜科およびテナガザル科の三次元的咀囑運動および咀囑力の種間変異を定量的に解析し、系統発生学的な拘束によるパターンと食性変異(果実食性,若葉食性,成熟葉食性,種子食性,雑食性)によるパターンを議論した論文の執筆が進行中である。
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Research Products
(3 results)