2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J04224
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中澤 侑也 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 血小板凝集 / 癌転移 / 抗血小板薬 / clopidogrel / 骨髄細胞 |
Research Abstract |
昔から、腫瘍細胞が血小板凝集を誘導し、その活性が転移能と相関することが知られている。その具体的な関わりは様々な報告があるが、要点は2点に絞られる。血小板が腫瘍細胞を覆うことで、一つは嵩高さ、粘着性が増して血管巣にトラップされやすくなる。もう一つは血管内でのずり応力や細胞障害活性に対する防御となる。この2点では作用は循環腫瘍細胞に限られ、理論的に抗血小板薬は投与以降の転移形成予防になるが、臨床において重要な既に成立している転移(潜在転移)の抑制には向かない。しかし最近になって、血管系イベントの際に血小板が骨髄細胞を動員し、血管新生や組織再生に適した微小環境を生み出すことが分かった。転移巣においても、骨髄細胞が作り出す微小環境が転移を促進することが知られている。私は、自発転移モデルと抗血小板薬clopidogrelを用いて、抗血小板薬の潜在転移への影響を検討した。結果、抗血小板薬は原発巣の外科的切除後の単剤投与で、肺転移を抑制することが分かった。さらに、抗血小板薬は腫瘍細胞と血小板の相互作用を抑制し、サイトカイン放出を減弱させ、転移巣への骨髄細胞の集積が抑えられることも分かった。つまり、抗血小板薬は転移巣における微小環境の構築を遅らせ、その結果転移が抑制されることが示唆された。続いて、抗がん剤を用いた術後化学療法、いわゆるアジュバンド療法での抗血小板薬の併用効果を検討した。結果併用した方が、それぞれ単剤投与よりも転移抑制効果が増強され、生存期間も改善された。しかし抗血小板薬を併用する際の最大の問題点は、抗がん剤による血小板数減少であり、これはしばしば血小板輸血を伴う。がん治療における本格的な応用のためには、腫瘍と血小板の特異的相互作用を抑えるアプローチが必要である。現在はその試みのひとつとして、腫瘍に特異的に発現する血小板凝集誘導因子Aggrusに注目して実験を行っている。.
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Research Products
(1 results)