2010 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系の超伝導と磁性に関する理論的アプローチ
Project/Area Number |
08J04258
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 大輔 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 冷却気体系 / 格子Bose系 / 格子超固体 |
Research Abstract |
冷却原子・分子気体に関する技術の飛躍的な進歩によって、光学格子中のBose気体の超流動-Mott絶縁体転移をはじめとする様々な興味深い現象を直接実験的に検証できるようになってきた。この分野における現在の大きな関心ごとのひとつとして格子Bose粒子の系における「超固体」相の実現がある。超固体とは結晶秩序と超流動秩序が共存する状態のことであり、この状態の性質を詳しく調べることは複数秩序共存現象一般に対する深い理解への大きな助けとなる。 これまでのところ超固体相が有限の超流動流に対して安定であるか否かも理論的に明らかにされていない。また、超固体相が実現されたとして、その存在を特定するためには結晶秩序と超流動秩序の双方を持ち合わせていることを示す必要がある。そこで我々は超固体状態における超流動流の臨界速度に関して解析を行った。実際の計算では光学格子中の極性原子・分子を想定し、等方的長距離相互作用を持つ2次元拡張Bose-Hubbard模型を用いた。その結果、流速の増加に伴い超流動相から超固体相に転移する領域があること、超固体相において動的不安定化が起こる臨界速度が超流動相のそれより著しく小さいことなどを明らかにした。これらの性質をもとに「超流動臨界速度を観測することで超固体相の超流動性を特定する」という実験方法の提案を行った。 上記の議論は電子系における超伝導・反強磁性共存相での超伝導臨界電流についても応用できると考えられ、超流動(超伝導)流に対する系の安定性という観点から複数秩序共存相共通の物理を理解していくという新たな方向性を提示した。
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