Research Abstract |
深成岩等を含む火成岩の中には,周期的に岩石組織が変化し,その間隔が等比数列的に変化する縞構造が見られるものがある事が知られている。本研究では,等比数列的に空間スケールが変化する岩石組織の形成を適切にシミュレーションするための不等間隔格子,熱・物質拡散とマグマの結晶化という2つの現象を共に適切な精度でシミュレーションするためのタイムスプリッティング法による時間積分などを駆使し,従来にない詳細な縞構造形成のシミュレーションを行った。その結果,潜熱放出と物質拡散のそれぞれの効果で異なった縞構造が形成される事,そしてそれぞれの詳細な形成メカニズムが明らかになった。更に,潜熱放出と物質拡散の2つの効果の非線形的な相互作用により,複合的な縞構造が形成される事を見出した。また,地層(母岩)の冷却強度が縞構造に与える影響も検討した。 当初は,上記のシミュレーションを発展させてマグマの発泡や結晶の沈降の作用を考慮するシミュレーションを実施する計画であった。しかし,母岩の冷却強度や,当初の予想を超えて非常に複雑である事が分かった潜熱放出と物質拡散の非線形的な相互作用に関して更なる検討が必要であると考え,発泡や結晶沈降など新たな現象を考慮することは見送った。 母岩からのマグマの冷却は,一般的には,現在考慮している伝導的な冷却ではなく,母岩中の水の対流による熱輸送の寄与を伴う。また,貫入したマグマ周囲の母岩に存在する空隙中の水の温度・圧力条件下では,水はしばしば飽和状態(気液2相状態)となるので,水の対流による熱輸送の効果をシミュレーションによって評価するためには気液2相流の解析が必須となる。しかし,従来用いられている地層中の気液2相流の数値計算手法はアルゴリズムが非常に繁雑である。そこで,本研究では,並列計算機を使用し,より簡易な方法で計算可能なアルゴリズムを独自に開発した。このアルゴリズムは,ソフトウェア開発等を専門としていない研究者でも容易にプログラミングを行い,気液2相流と任意の物理・化学現象との複合問題をもシミュレーションする事を可能とするものである。この成果を日本地熱学会平成20年金沢大会において発表し,学生ベストポスター賞を授与された。
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