2009 Fiscal Year Annual Research Report
深成岩体の累帯構造から探るマグマ溜り進化の物理過程
Project/Area Number |
08J04303
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 光央 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 熱水系 / 蒸気熱水対流系 / 数値シミュレーション / 陽解法 / 蒸気表 / 九重硫黄山 / 並列計算 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に考案した地層内の蒸気熱水対流の数値計算アルゴリズムに関して更に検討を行った。加えて、このアルゴリズムの実用可能性の実証実験として、大分県の九重火山中央部に位置する九重硫黄山の熱水系の3次元シミュレーションを実施した。地層内の蒸気熱水対流は、熱や物質を効率的に輸送する事から、マグマの冷却・固化によって形成される深成岩や火山岩などの火成岩の形成過程において重要な役割を果たすと考えられる。本年度の研究成果の要点は、以下の3点である。 (1)まず、考案したアルゴリズムの数値安定性を実験的に調べ、安定に計算可能な時間ステップの長さの上限を与える実験式を導出した。考案したアルゴリズムは陽的な時間積分を採用したものであるため、陰的な時間積分を採用した従来のアルゴリズムよりも数値安定性を維持するための時間ステップの長さの制限が厳しくなる。時間ステップの長さは、シミュレーションの計算時間の長さを直接的に決定づけるものであるので、使用可能な時間ステップの長さの上限が実験式によって評価できる事は、考案したアルゴリズムを個別の問題に適用する上で極めて有用である。(2)次に、地層内の蒸気熱水対流のシミュレーションを行う上で必要な水の物性を高速に計算するための電子蒸気表を開発した。この電子蒸気表を使用することで、状態方程式などの実験式をそのまま使用する場合に比べて計算時間は10分の1未満に短縮された。(3)最後に、九重硫黄山の熱水系の3次元シミュレーションを通して、考案したアルゴリズムの実用可能性を示した。このシミュレーションにより、1995年噴火後に九重硫黄山直下に貯留していた蒸気・熱水が多量に地表に放出し、それに伴う急減圧が飽和曲線に沿った急激な温度低下を引き起こしたとする数値モデルを提案し、九重硫黄山の熱水系の減圧および冷却過程に関して重要な知見を得た。
|