2009 Fiscal Year Annual Research Report
キラル光による生物挙動のコントロールとその分子と機構解明
Project/Area Number |
08J04310
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Research Institution | Hokkaido University |
Research Fellow |
中橋 徳文 Hokkaido University, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 円偏光 / キラル / 円二色性 / クラミドモナス / フィトクロム / 光異性化 |
Research Abstract |
本研究では、主にCD等の分光技術に応用されている円偏光を生物に照射し、生物がどのような応答を示すか検証している。昨年度は光が生理現象に深く関与する植物に着目して研究を行った。実際、シロイヌナズナに左右の赤色円偏光(670nm)を照射し生育させた結果、左右で成長に違いが観察された。しかし、個体差等の実験上の問題点が浮上した。 従って本年度は、より統計処理が容易な光合成バクテリアに着目し実験を行った。実際に用いたのは、クラミドモナスと呼ばれる緑藻である。本緑藻はシロイヌナズナと同様、全ゲノム配列が解明されたことで、モデル生物としての利用が盛んであり、光合成研究に多用されている。初めにクラミドモナスに左右の赤色円偏光を照射し、増殖の様子を観察した。時間ごとに590nmのODを計測し増殖曲線を描いたところ、左右で増殖に顕著な差は観測されなかった。用いる液体培地の検討も行ったが差異は観察されなかった。本結果から、クラミドモナスは左右の赤色円偏光を識別しないことがわかった。これは期待していた結果ではないものの、クラミドモナスの増殖に対して円偏光の方向性が影響しないことを明らかにした世界で初めての結果である。 本年度はさらに、赤色装置の際に浮上した様々な問題点を改善し、青色円偏光装置の開発を企業と共に行った。本装置は、中心波長450nm,半値幅40nmの青色左右円偏光を、二分した領域に照射可能な装置である。本装置を用いて上記と同様の実験を行った。結果、赤色と同様に、青色においても左右円偏光で顕著な差異は観測されなかった。以上の結果より、円偏光の方向性はクラミドモナスの増殖にとって重要ではないものと考えられる。今後はクラミドモナスの走光性等に対する円偏光の影響を調査する予定である。
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Research Products
(6 results)