2008 Fiscal Year Annual Research Report
キラル光による生物挙動のコントロールとその分子機構解明
Project/Area Number |
08J04310
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中橋 徳文 Hokkaido University, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 円偏光 / キラル / 円二色性 / 発色団 / フィトクロム / 光異性化 |
Research Abstract |
本研究では、主にCD等の分光技術に応用されている円偏光を生物に照射し、生物がどのような応答を示すか検証している。対象として、光が生理現象に深く関与する植物に着目した。シロイヌナズナに左右の赤色円偏光を照射し生育させた結果、左右の円偏光間で成長に違いが観察された。個体差等の問題点が判明したため、今後は統計処理が容易な光合成バクテリアの実験を予定している。ただしフィトクロム欠損型のシロイヌナズナでは、円偏光の効果が一切観察されなかったことから、フィトクロムの左右円偏光受容効率が異なるものと考えられる。フィトクロムは赤色光の受容体で、発色団を結合した水溶性のタンパク質である。フィトクロムによるシグナル伝達機構の第一段階は光照射による発色団二重結合の異性化であり、本事実を基に以下の仮説を立てた。生体内において発色団はアポタンパク質との結合によりキラルな構造をとっており(不斉の誘起)、左右円偏光の吸収効率に差が生じる。結果異性化率にも差が生じ、一連のシグナル伝達を経て成長の差として観察される。本仮説立証のため、まず化合物レベルで異性化率に差が生じるか検証した。モデル化合物としてビリベルジンを用いることとし、不斉誘起のためには本化合物が有するカルボン酸を足がかりにバリンを結合させた。結果、CDスペクトルにて不斉の誘起を確認できた。次に光異性化反応の検討を行ったところ、本化合物の二重結合はZ配置が安定であり、E配置への光異性化は容易に起こらないことが判明した。しかしアルミナに吸着させた固体状態では本反応が起きることを見出した。最後にCDスペクトルを用いた異性化率評価系構築の検討を行った。
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Research Products
(7 results)