2009 Fiscal Year Annual Research Report
余剰次元模型におけるフレーバー物理とコライダーの物理
Project/Area Number |
08J04354
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿部 智広 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電弱対称性の破れ / 電弱精密測定 / フレーバーの物理 / 余剰次元模型 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、ヒッグス粒子なしに電弱対称性を破る模型であるヒッグスレス模型の研究、特にその有効理論である3サイトヒッグスレス模型におけるフレーバーの物理について研究を進めた。まず、前年度に進めた、この模型におけるZ→bb過程への補正およびカイラルカレントに関する研究をまとめた。この研究により、Z→bb過程からの模型への制限は、電弱精密測定からの制限よりも比較的緩いものになることが明らかとなった。結果は論文として出版された。 次に、この模型におけるFCNCの構造を調べた。これまでの研究では、FCNCは抑制されなければならないという現象論的な要請により、模型に含まれるあるパラメータ、湯川結合定数とディラック質量項、を世代によらないものと仮定していた。この仮定は、ビッグスレス模型が5次元ゲージ理論に基づくと考えれば一見妥当な仮定に思われが、有効理論の立場からすると、それを保証する対称性は存在せず、たとえあるエネルギースケールでそれが成り立っていたとしても、一般には量子補正によってパラメータの世代依存性は現れる。そこで、今年度は、この仮定を外し、FCNCから許される湯川結合定数とディラック質量項の世代依存性がどの程度なのかを、量子補正による効果も含めて調べた。解析の結果,世代依存性がない場合からのずれの許容範囲は、レプトンセクターはおよそ1%以下、クォークセクターは大きいものでもおよそ10%以下で、ほとんどが1%以下であることがわかった。また、くりこみ群による効果は大きいものでも高々1%ほどであり、影響はほぼ無視できる程度であることもわかった。このことから、この模型にこれまで課されていた仮定が妥当で、かつ、それは量子効果の元でも安定であることが確認された。この結果は現在論文にまとめている最中である。
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Research Products
(9 results)