2008 Fiscal Year Annual Research Report
音響ブラックホールモデルを用いたブラックホール物理の解明
Project/Area Number |
08J04371
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥住 聡 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ブラックホール / 重力波 |
Research Abstract |
ブラックホールがその1次摂動において減衰する固有振動モードをもつことは従来からよく知られていた。これは準固有振動と呼ばれる。ごく最近、2次の摂動にもこれに類似する振動モードが存在することが指摘されていた(Ioka & Nakano 2007)。しかし、この先行研究で用いられた解析手法は1次摂動においてのみ妥当性が知られていたものであり、2次摂動においてその手法が正しいものであるかどうかには大いに疑問が残されていた。また、先行研究は2次摂動の固有値問題を解析したに過ぎず、それらの非線形固有モードがどのような条件のもとに励起されるのかは明らかにされていなかった。本研究員は高次摂動においても妥当性が保証される新たな解析手法を独自に開発し、先行研究で予言されていたスペクトルをもつ2次準固有振動が実際に存在することを証明した。さらに、新たな解析法を用いたことの副産物として、励起された準固有振動は冪的に減衰するテイルを伴うことを発見した。この非線形由来の冪的テイルはこれまでのブラックホール摂動論では知られていなかったまったく新しい現象である。これらの現象は近い将来観測されるであろう重力波形に大きな影響を与えると予想される。上記の研究成果は論文にまとめ、国際論文誌Physical Review Dにおいて発表した。また、2008年6月にバルセロナで開かれた国際会議The 7th LISA International Symposiumにおいて研究成果のポスター発表も行い、発表内容をまとめた論文は当国際会議の紀要(査読あり)に掲載されることが決定した。
|