2008 Fiscal Year Annual Research Report
フランス革命期の英国における感受性文化と女性による書簡体文学
Project/Area Number |
08J04379
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平倉 菜摘子 Waseda University, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 18世紀英国 / 女性と感受性文化 / 手紙・書簡体文学 / 自伝・伝記・Life-Writing / メアリ・ウルストンクラフト / ジェイン・オースティン / ロマン主義時代の旅行記 |
Research Abstract |
<研究目的>18世紀啓蒙思想に裏打ちされたプロト・フェミニストとしての面が強調されがちなメアリ・ウルストンクラフトは、同時代の感受性文化を体現する女性でもあった。『女性の権利の擁護』において感受性は知性・理性のほぼ対極に置かれ、女性を堕落に導く根源として捉えられているが、私的書簡や書簡形式の作品においては高く評価され、知性・理性との融合が試みられている。当時女性特有の美徳と認識され始めていた感受性を、本来私的領域(個人や家庭)に属する書簡というメディアを用いて表現することにより、「女性らしさ」の範疇から外れることなく私的な声を公的な声に変化させることに成功した女性としてのウルストンクラフトの面を検証する。 <研究方法>準書簡体小説The Wrongs of Womanにおける女性の感受性と美徳(特にセクシュアリティ、母性との関連)を分析する。『女性の権利の擁護』では啓蒙思想の高まりの中、「男女共通(平等)」すなわち「人間」の資質として捉えられていた美徳が、The Wrongs of Womanでは明らかに男女別のものとして認識されている。ウルストンクラフトの考えた「女性特有の美徳」をフォーダイスやグレゴリ等による慣習的なものと比較し、「男女平等」の先にある「女性特有の美徳」を検証する。 <研究成果>英国の学会で発表した上記論文が『イギリス・ロマン派研究』に掲載され、また同学会がきっかけで来秋の学会(ドイツ)に論文発表で参加することが決定した。来年度はウルストンクラフト研究の第一人者ジャネット・トッド教授(ケンブリッジ大学)のもとで研究を行い、トッド教授によるウルストンクラフトの伝記や書簡集の研究・翻訳を通じ、特に日本における偏ったウルストンクラフト像の修正を試みつつ、「フランス革命期の英国における感受性文化と女性による書簡体文学」の全体像を明らかにすべく精進を続けたい。
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Research Products
(6 results)