Research Abstract |
本研究では,第一原理計算手法を主なアプローチとして凍結フォノン計算により軽元素系水素貯蔵物質の格子振動モードを求め,振動モードの特異性,構造の安定性,熱力学特性の評価を目的として研究を進めている.本年度は,リチウム,マグネシウム等のアルカリ及びアルカリ土類金属元素Mを含むアミドM(NH_2)_n,アルミニウム水素化物(アラネート)M(AlH_4)_nにおけるN-H及びAl-Hの対称称伸縮モードに着目し,第一原理計算によりその振動数を求めた.その振動数と局所構造に相関がみられることを示し,カチオンが異なると,電子状態においてそのsp軌道と分子軌道との混成に有意な違いがみられることを明らかにし,それら混成の違いと振動モード,局所構造に見られる傾向について,その微視的機構を分子軌道の面から理解できることを示し,論文にまとめた.また,マグネシウムアンミン塩化物Mg(NH_3)_xCl_2,(x=6,2,0)の結晶構造の安定性を調べることを目的に格子振動計算手法開発とそのコード開発を進めた.第一段階として,Mg(NH_3)_xCl_2,(x=6,2,0)の低温における結晶構造とその電子状態について調べた.特にごく最近,Mg(NH_3)_6Cl_2の構造について,実験により調べられた結果,水素の位置に関して不明な点があることが報告されている.その水素位置を対称性の高い位置に置くことにより構造を仮定し,構造の最適化を行った.またx=2,0の構造についても生成熱を議論するために構造の最適化を行っている.またそれぞれの電子状態とその構造安定性について理解するために,電子状態計算を実行しそれらの結合の違いについて調べた.Mg(NH_3)_6Cl_2の構造安定性について任意の波数ベクトルに対する振動モードを求め,そのフォノン分散曲線から議論することを目的に,凍結フォノン近似を用いた格子振動計算手法とそのコード開発を進め,いくつかのプログラムを作成した.
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