2008 Fiscal Year Annual Research Report
信頼と寛容の社会学-イギリスの人種関係政策の分析をとおして
Project/Area Number |
08J04553
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安達 智史 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ブリティッシュネス / 多様性と結束 / リベラル・ナショナリズム論 / 社会統合政策 |
Research Abstract |
ナショナル・アイデンティティの共有による、多様性と社会的結束の間のジレンマの克服という、リベラル・ナショナリズム論による理論モデルを検証するために、イギリスにおける「ブリティッシュネス=イギリス人らしさ(Britishness)」という観念に注目し、研究を進めた。ブリティッシュネスは、近年新労働党政府により社会統合の基礎として提示されているものであるが、その意味や近年のその政治的使用の特徴をとらえるため、その観念をめぐる質的・量的データの分析を用いた研究のレビューをおこなった。加えて、いくつかの量的データを用い、ブリティッシュネスについての人々の認知の変遷を調べ、またそれの観念が文化的多様性と社会的結束に対する機能を多変量解析により分析した。その結果によると、ブリティッシュネスという観念は、イングリッシュネス(Englishness))に比べ、多様性を収用し、かつそれにコミットするものは、多様性に対しより寛容で、統合に対しても同化主義的・民族的な規範に対し消極的な態度をとることが明らかにされた。イギリスの社会統合政策およびその近年の変化の特有性を考察するために、フランスの戦後社会統合政策との比較をおこなった。その際、両国における、社会の哲学と構造の差異に着目した。そこで、フランスにおいて官僚機構の市民社会に対する優位、および共和主義の自己認知が、移民の同化主義的な社会統合政策を実施させることを。他方で、イギリスにおいて、市民社会の国家機構に対する優位、および大英帝国のイデオロギーと自己認知が、移民やエスニック・マイノリティの社会統合に消極的で、多文化主義を許容する状況を生み出したことを明らかにした。また、このような差異がありつつも、移民や難民の増大をともなうグローバル化する環境のなかで、両国の社会統合政策(シティズンシップと多文化主義)が接近しつつあることが観察された。
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Research Products
(8 results)