Research Abstract |
今年度は,大きく分けて以下の3つの研究を行った. (1)昨年度,Cベース動作合成用ベンチマークスイート,CHStoneを開発した.大きくかつ使いやすい現実的な12個のアプリケーションプログラムから成り,フリーで一般公開されているCベース動作合成用ベンチマークセットとしては初めてのものである.今年度は,CHStoneを様々な視点から定量的に解析し,更にこの研究の完成度を高めた.具体的には,CHStoneのベンチマークプログラムを多様性,サイズ,合成可能性,使いやすさの点について,ソースレベルと合成されたRT記述を解析した.更に,この解析結果より,現在の大規模動作記述からの動作合成における2つの問題点を明らかにした.本研究の成果は,私の研究実施計画内の研究のみでなく,多くの動作合成研究者の今後の研究にとって,非常に有用である. (2)同様に,昨年度提案した大規模動作記述からハードウェアを動作合成する際の動作記述分割手法について,より詳細な実験・評価を重ね,研究の完成度を高めた.提案手法は,大規模動作記述からLSIを動作合成する際,最適な動作記述分割を形式的に決定する.今年度の研究により,本研究は既存の研究で探索し得なかった解を探索可能であるだけでなく,既存手法と併用することで,より広い設計空間を効率良く探索可能であると言う新たな成果を得た.本研究の成果により,大規模LSIの動作合成技術がより実用的なものになると期待される. (3)大規模動作記述からより良いLSIを動作合成するためには,(2)だけでなく,動作合成中の最適化技術も非常に重要である.これまで様々な手法が提案されてきたが,それらの多くは大規模なLSIの合成ではあまり効果が得られない.今年度は,ソフトウェアのコンパイラでしばしば使用されるSSA変換を動作記述に適用する手法を提案した.この手法により,合成された回路の周波数を大幅に向上した.更に,現在,合成回路の構成を従来手法より大域的に最適化する手法について取り組んでいる.これらの最適化手法は,私の研究実施計画を追行するために,非常に重要な研究となると期待される.
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