2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J04595
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥村 恭幸 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | LHC実験 / ATLAS実験 / 高エネルギー物理学実験 / トップクォーク / ヒグス粒子 / ミュー粒子 / トリガーシステム |
Research Abstract |
本研究では、重心系エネルギー14兆電子ボルトでの陽子・陽子衝突実験であるLHC-ATLAS実験のデータを用いて、トップクォーク対を伴うヒグス粒子生成過程を探索する。その特色は、トップクォークの崩壊終状態に現れる高い運動量のミュー粒子に着目し、ミュー粒子検出器の応答を用いて、大量の雑音信号の中から、効率よくトップクォークを含む事象を同定することにある。一年目である本年度は、LHC加速器運転開始前のミュー粒子測定システムの構築・調節を最重要課題と定め、以下を達成した。 1、ミュー粒子トリガー検出器システムの構築 2、宇宙線信号、試験用疑似信号を用いたハードウェアの調節 3、宇宙線信号を用いたミュー粒子スペクトロメータシステムの動作検証のためのデータ解析 エレクトロニクスボードの実験ホールへのインストール、故障ボード発見・交換等のシステムのデバッグ、制御系のソフトウェアの開発・試験を2008年の夏までに完了させた。並行してミュー粒子トリガーシステム全32万チャンネルの信号のケーブル遅延時間の測定を実験ホールにおいて実現。この測定を基に、信号の遅延パラメタを最適化することが、コインシデンストリガー検出器が最高性能を出すために必要不可欠である。2008年のLHC陽子ビーム周回時には、この調節が25ナノ秒(光が15m直進するのにかかる時間)の精度で正確に達成されていることを、初ビーム周回日の内にデータを解析し明らかにした。また宇宙線信号を用いた試験データを解析し、検出器の位置分解能・検出効率の評価をいち早く行い、検出器の性能の評価を行うとともに、ハードウェア(検出効率が85%程度でありデザイン(90%)と比べ低い)・ソフトウェア(検出器の設置位置情報に誤りがある)の観点からの改善が必要な箇所を発見した。これらの修正を2009年度の早期に完了して、2009年秋からビーム衝突に備える。
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