2008 Fiscal Year Annual Research Report
光合成系のキノン電子受容体のプロトン・電子移動反応におけるチロシンの役割
Project/Area Number |
08J04647
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高橋 亮太 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | FTIR / チロシン / 光合成 / 非ヘム鉄 / カルボキシル基 / 量子化学計算 / クロロフィル |
Research Abstract |
1:光合成の酸素発生を担う光化学系IIには、Q_A、及びQ Bと呼ばれるキノン電子受容体が存在する。これらの間には、2つのチロシンD2-Tyr244(Y244)とD1-Tyr246(Y246)が存在し、非ヘム鉄と配位した炭酸水素イオンに隣接している。そこで、本研究では、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)と量子化学計算を用いて、これらのチロシンの水素結合構造を調べた。その結果、これらのチロシンと炭酸水素イオンの間に水素結合が形成され、これらのアミノ酸残基と分子が相互作用していることが明らかとなった。この水素結合は、Q_AとQ B周辺ネットワークの一端であること、及び、電子・プロトンの移動を伴うQ_Bの還元反応において重要な役割を果たすことが示唆された。 2:種々の酵素反応においてカルボキシル基を持つグルタミン酸やアスパラギン酸が、重要な役割を果たすことから、特にその水素結合構造を知ることが大きな研究課題となる。そこで、量子化学計算を用いて、カルボキシル基の水素結合構造と分子振動の相関を調べた。この結果から、FTIR法を用いてカルボキシル基水素結合構造を明らかにするための解析基準を確立した。この成果は、生化学に限らず、幅広い様々な分野の研究において、重要な知見となることが期待される。また、この基準を用い、光化学系IIの非ヘム鉄近辺を調べた結果、この鉄とグルタミン酸由来と考えられるカルボキシル基が相互作用している可能性が示唆された。 3:量子化学計算を用いて光化学系IIのクロロフィル2量体P680の酸化還元電位について調べた。その結果、このクロロフィルは、2量体間に形成される相互作用によって、高い酸化還元電位を維持することを明らかにした。
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Research Products
(6 results)