2009 Fiscal Year Annual Research Report
ウナギの降河回遊の開始メカニズムに関する行動学的研究
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08J04652
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須藤 竜介 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 降河回遊 / LHβ / 11-ケトテストステロン / 濁度変化 / 通過センサ / 月齢 / 行動観察 |
Research Abstract |
本年度ではウナギの降河回遊の開始メカニズムをより総合的に理解するために、以下の実験を行った。 1.銀化に伴う行動変化 黄ウナギと銀ウナギの行動学的な差異を調べるために、パイプ入りの水槽を用いて行動観察を行った。黄ウナギ23尾、銀ウナギ23尾を用いて解析を行った結果、銀ウナギは黄ウナギに比べ活動的な時間が長くなることが分かった。本実験により銀ウナギは黄ウナギに比べ、活動が活発になり、定着性が薄れることが傾向にあることが示唆され、このことは今後の行動実験をする上での行動指標になると考えられた。 2.ウナギの降河回遊に伴う内分泌動態 降河回遊の開始メカニズムの内分泌学的な背景を探るため、耳石微量元素分析を利用し降河行動の有無を調べた後、生理学的解析を行った。雌107尾、雄61尾を用いて、性ステロイドおよび主要下垂体ホルモンmRNAの発現動態を調べたところ、降河回遊に伴い11-ケトテストステロン(11-KT)と黄体形成ホルモンβサブユニット(LHβ)が顕著に増加することがわかった。 3.11-KTと回遊に関する実験 内分泌動態から回遊した個体では11-KTの増加がみられた。そのため、回遊シーズンに起きる温度低下に伴い11-KTが増加するのか。また11-KTを投与しウナギの形態および行動は変化するのかを調べた。温度低下実験の結果、約50日間で10度温度を下げた群は対照群に比べ11-KTの値が有意に高値を示した。またシリコンチューブによる11-KTの投与を行った。その結果、生殖腺の増大などの形態変化および行動の変化がみられた。このことから、11-KTが回遊の動機づけに関与している可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)