2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内運動性顆粒の高速SPM観察:ストレスファイバー形成への力学的機構の解明
Project/Area Number |
08J04710
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田村 和志 Hokkaido University, 大学院・理学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 走査型プローブ顕微鏡 / アクチン細胞骨格 / ライブセルイメージング / 細胞内輸送 |
Research Abstract |
細胞内に存在するアクチン線維の束であるストレスファイバーは、組織の傷の修復、組織の力学的性質の維持、細胞の移動などにとって極めて重要な構造体である。この構造体の形成には、モータータンパク質ミオシンIIの発生する力が重要であることはわかっているが、どのようにしてこの力がアクチン線維を時空間的に組織化しているのかは未解明である。本研究では、生きた細胞の内部でどのようにストレスファイバーが形成されるかを走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて観察した。昨年度、私はストレスファイバー形成過程に出現する斑状構造体を発見した。本年度はこの構造体の動態を3秒の時間分解能(従来のSPM観察では1分~10分、昨年度に私が実現した観察法では10秒)で観察することに成功した。その結果、斑状構造体の動きは直線的でなくゆらいでいることを発見した。そして、このゆらぎがミオシンIIに依存することを明らかにした。このことは、細胞内においてミオシンIIはランダムな方向に力を働かせていることを示唆している。今後、このようなランダムな力が、どのようにして秩序だった構造(ストレスファイバー)を形成するのかについて調べる必要がある。さらに、斑状構造体の構成タンパク質を明らかにするために、蛍光タンパク質によってタンパク質分布を可視化する方法を用い、20種類を超えるタンパク質の分布を解析した。その結果、アクチンに加えて、新たにアクチン結合タンパク質Arp3、アクチン結合タンパク質コータクチン、膜小胞関連タンパク質Src、膜小胞関連タンパク質Rab34が斑状構造体に集積することを発見した。このことは、斑状構造体が膜小胞と結合することを示唆している。斑状構造体はミオシンIIの力を介して膜小胞の輸送に関与しているかもしれない。ミオシンIIの細胞内輸送に対する役割は未解明であるため、この仮説も今後詳しく検証する必要がある。
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Research Products
(6 results)