2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子磁束系を中心とした異方的超伝導における動的・静的現象の理論的研究
Project/Area Number |
08J04840
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 佑紀 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鉄系超伝導 / 量子磁束系 / 第二種超伝導 / 物性理論 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、鉄系超伝導体に関する理論的研究を行った。特に、鉄系超伝導体において実現している超伝導対称性を実験的に同定する手段を理論的に提案することを目的とした。これは、鉄系超伝導体の超伝導対称性として有力な候補と考えられている「±s波超伝導」が実験的に確かに検出できる実験手法を提案することを意味している。まずはじめに、ポイントコンタクトスペクトロスコピー実験を念頭において、±s波超伝導体の界面での束縛状態について理論的に調べた。その結果、界面束縛状態は鉄系超伝導体のマルチバンド性と±s波超伝導対称性を反映して特異な状態となることがわかった。次に、研究課題である量子磁束系に着目し、走査型トンネル顕微鏡による準粒子干渉効果の測定を念頭において、磁束中心における不純物散乱率の理論的研究を行った。その結果、「±s波超伝導」がもし鉄系超伝導体で実現しているのであれば、準粒子干渉パターンに特徴的な構造が見られるであろうことを予言した。最後に、前年度に開発した磁場回転比熱・熱伝導率測定の理論解析手法を鉄系超伝導体にも適用した。この手法は、第一原理計算によるバンド計算の結果を取り込んで実験結果の解析をすることができ、前年度に示したように実際の物質への適用が可能である。対象とした鉄系超伝導体はBaFe2(As0.67P0.33)2である。この物質は他の鉄系超伝導体と同程度の高い超伝導転移温度を持ちながら、超伝導ギャップにノード(ゼロ点)があるといわれている。もしノードがあるのであれば、そのノード位置を実験的に特定することは重要である。我々はさまざまな超伝導対称性を仮定して計算を行い、今後得られるであろう実験結果に対する予言を行った。
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Research Products
(12 results)