2008 Fiscal Year Annual Research Report
イノラートを用いた回転選択的オレフィン化反応の体系化と機能性分子の合成
Project/Area Number |
08J04914
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉川 孝 Kyushu University, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イノラート / 回転選択性 / オレフィン化 / 理論化学計算 / 二次軌道相互作用 / 立体選択的反応 / アルキニル基 |
Research Abstract |
イノラートを用いた回転選択的オレフィン化反応を精査するため、硫黄置換基およびアルキンによる幾何異性制御を試みた。まず、イノラートとα-アルキルチオケトンとの反応を行ったところ、1-アルキルチオエチル基がinward回転したZ-オレフィンが高収率・高立体選択的に得られた。すなわち、硫黄置換基は電子受容性基として機能したことになる。次に、アルキノンのオレフィン化を試みたところ、アルキニル基がoutward回転したオレフィンを高い立体選択性で得た。一方、アルキン酸エステルを基質とした場合には、アルキニル基がinward回転、アルコキシル基がoutward回転したオレフィンが得られた。つまり、電子供与性基としての強さは、アルコキシル基>アルキニル基>アルキル基の順となることが明らかとなった。 これらの実験結果に対し、理論化学計算による解析を試みた。α-チオケトンおよびアルキノンのオレフィン化における遷移状態を密度汎関数法で求め、さらにNBO(Natural Bond Orbitals)解析を行った。その結果、α-チオケトンからZ-オレフィンを与える遷移状態6ではオキセテンの開裂するσ(C-O)軌道とアルキルチオエチル基のσ*(G-S)軌道との間に二次軌道相互作用が確認でき、硫黄置換基の電子受容性が示された。また、アルキノンからE-オレフィンを与える遷移状態7ではオキセテンの開裂するσ*(C-O)軌道とアルキンのπ(C-C)軌道との間に二次軌道相互作用が見られ、アルキニル基の電子供与性を確認することに成功した。 以上、イノラートを用いたαチオケトン、アルキノン及びアルキン酸エステルのオレフィン化反応において、高度な回転選択性の制御を初めて実現した。また、理論化学計算により、遷移状態における二次軌道相互作用が、選択性発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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Research Products
(4 results)