2010 Fiscal Year Annual Research Report
基板上に展開したモデル細胞膜内部の分子スケールプロセス:STMによる研究
Project/Area Number |
08J04916
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松永 宗一郎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡(STM) / 細胞膜 / 自己組織化膜 / リン脂質 / タンパク質 |
Research Abstract |
本研究は生体表面で起こる化学反応を分子スケールで追跡し、ナノスケールの実空間可視化と分光学的手法を通じてその詳細なメカニズムを明らかにすることを目的とする。 本年度は昨年度までに得られた結果である、走査トンネル顕微鏡によるナノメートルスケール可視化から得られた情報をもとにし、赤外吸収分光を行うことでより詳細な反応メカニズムの追跡を行った。生体膜に赤外吸収分光法を適用する際には、水溶液中での測定が必須となり、また単分子膜からの信号検出のため従来の方法では信号がノイズに埋もれてしまい安定的な観測ができなかった。私は測定試料の改良、最適化を行うことで水溶液中でも、より高精度の測定を実現し、「水溶液中」における「単分子膜」からの信号を検出することができた。生体分子に分光学的手法を用いることができ、本研究の目的である反応メカニズムの解明が大幅に進歩した。 また実際の生体に近い混合脂質のモデル細胞膜系を構築し、STM観測を行った。混合脂質膜の構成脂質としては、生体内に広く見られる中性脂質と帯電脂質を用いることで、モデル細胞膜におけるラフト生成をもくろみ、脂質ラフトの生成メカニズムの解明を目指した。その結果今までに報告されたことのないほど小さい集合体を発見するとともに、ナノメートルスケール可視化を通じてカルシウムイオンと帯電脂質の相互作用を明らかすることができた。この最小の脂質集合体は現在分子細胞生物学で注目されている脂質ラフトの基礎となるものであり、この研究が与えるインパクトは非常に大きいものである。
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Research Products
(4 results)