2009 Fiscal Year Annual Research Report
アユモドキの"純淡水回遊"から魚類の遡上を普遍的に制御する環境-内分泌要因を探る
Project/Area Number |
08J04924
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
阿部 司 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 魚類 / 回遊 / 環境要因 / 内分泌要因 / 氾濫原 / 絶滅危惧種 / 保全 / アユモドキ |
Research Abstract |
アユモドキはドジョウに近縁な淡水魚で、国の天然記念物にも指定されている絶滅危惧種である。これまでの野外調査で、本種は河川の本流と洪水や灌漑などにより一時的に形成される氾濫原や水田地帯の間で"純淡水回遊"を行うことを明らかにしてきた。このコンパクトな回遊をモデルとし、回遊の普遍的制御機構を、環境要因-内分泌系の役割を中心に検討した。まず野外における調査で、初夏に成熟魚が河川本流から水路を遡上し、上流の氾濫原で産卵した魚と成長した当歳魚が河川へ下ることが確認された。遡上の環境要因として降雨とそれに伴う水位上昇が、内分泌要因としてテストステロンや甲状腺ホルモンの上昇が考えられた。これらは、サケ科魚類など分類群や生態の異なる魚類でも示唆されており、回遊を制御する普遍的な要因の可能性がある。そして、二つの地域個体群における産卵行動の連続観察から、産卵の環境要因として水位上昇-陸域の水没-氾濫原環境の形成が重要であることが確認された。これら成魚の遡上と産卵のについて環境要因を特定するため、行動実験水槽を作製し、環境因子を別々に操作し影響を検証した。遡上行動については、産卵場所の土を浸した水によって遡上行動が惹起され、さらにその土を浸けた水を土無しの水に比べ有意に選択することが明らかとなった。産卵についても実験環境下で再現することに成功し、水位上昇は直接の環境要因ではなく、産卵場所の土が水に浸かることが重要であることがわかった。つまり、遡上と産卵についてはそれまで陸地であった産卵場所が浸水することが重要で、そのときに起こる水質の変化、または水没した土から生じる物質が各行動の直接の要因であることが示唆された。
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Research Products
(7 results)