2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J04954
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮崎 牧人 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生物物理学 / 一分子計測 / 時系列解析 / ベイズ推定 |
Research Abstract |
化学反応から力学的な運動を取り出している酵素のエネルギー変換機構を解明するには、酵素一分子の化学力学変換を顕微鏡下で可視化し、得られた観測データから酵素のダイナミクスを粗視化したモデルを構築し、そのモデルを用いてエネルギー論を展開する必要がある。酵素反応の素過程を顕微鏡下で可視化する技術はめざましい進展があるが、それらの最新技術を駆使しても、我々の観測できる自由度は酵素1分子の持つすべての自由度のうちの僅かである。従って、限られた自由度の観測データから直接観測することの出来ない自由度の動きや酵素の内部構造を推測し、如何に酵素の本質的な部分を抽出した粗視化モデルを構築できるかが酵素のエネルギー変換機構解明のキーポイントであるが、汎用的な処方箋がないのが現状である。そこで我々は、観測できる自由度の軌跡のみからモデルパラメータを推定する方法論を、統計力学と経験ベイズ推定の枠組みを用いて構築した。我々の推定法は、観測時間が無限大の極限では真のパラメータの値で周辺尤度が極大値を持つことを一般的に示すことが出来た。しかし、実際の実験に適応するためには有限の観測データからパラメータを推定しなければならない。有限時間の観測で実用的であるかを確認するために、調和振動子で構成される隠れた自由度を持つ簡単な系で数値実験を行った。パワースペクトルを用いた従来のパラメータ推定法と推定精度の比較を行ったところ我々の推定法がほとんどの条件においてより良い推定値を与えた。また、従来の方法は非線形モデルへの拡張が困難であるのに対して我々の方法は非線形系へ系統的に拡張することができるので、我々の推定法は従来の推定法よりも格段に汎用性の高く信頼できる推定法であることがわかった。新規に開発した方法を用いれば、酵素一分子の観測データから系統的に酵素の粗視化モデルを求めることができ、粗視化モデルを用いた酵素の化学力学反応のメカニズムに迫れると期待される。
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Research Products
(6 results)