2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J04954
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮崎 牧人 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生物物理学 / 分子モーター / 一分子計測 / 時系列解析 / ベイズ推定 |
Research Abstract |
化学反応から力学的な運動を取り出している酵素のエネルギー変換機構を解明するには、酵素一分子の化学力学変換を顕微鏡下で可視化し、得られた観測データと結晶構造等の情報を統合して酵素のダイナミクスを粗視化したモデルを構築し、そのモデルを用いてエネルギー論を展開する必要がある。酵素反応の素過程を顕微鏡下で可視化する技術はめざましい進展があるが、それらの最新技術を駆使しても、我々の観測できる自由度は酵素1分子の持つすべての自由度のうちの僅かである。従って、生体分子の詳細を明らかにするためには、限られた自由度の測定データから直接観測することの出来ない自由度の動きや分子の物性値を推定するという逆問題に直面するが、限られた自由度の時系列データから系の内部情報を抽出する処方箋は未整備である。我々はこの問題に対してベイズ推定の枠組みで取り組み、隠れた自由度を持つ微小系に対するパラメータ推定の一般的な枠組みを確立した。我々の構築した推定法を用いると、観測時間が無限長という理想的な条件では正しい推定値が得られ、観測時間が有限な場合は、推定誤差が観測時間に漸近的に反比例して減少することが一般的に示せた。次に構築した推定法の実用性を確認するために、簡単なモデルで数値実験を行った。パワースペクトルを用いた従来のパラメータ推定法と推定精度の比較を行ったところ、我々の推定法がほぼすべての条件においてより良い推定値を与えた。また、真のパラメータの値がある閾値を超えると、推定結果が急激に不安定になる構造を持っていることを見出した。これはプローブの大きさとリンカーの設計を間違えるとパラメータ推定が急激に困難になることを意味しており、実験系の設計に役立つ重要な知見と考える。実験をする際に重要な情報である、転移線の観測時間と時間分解能の依存性などを調べ上げ、我々の提案するパラメータ推定法の一般論と簡単な系での数値実験の結果を学術雑誌に投稿中である。
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Research Products
(5 results)