2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属・絶縁体転移近傍で発現する新しい量子状態の解明
Project/Area Number |
08J04979
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井村 敬一郎 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 重い電子系 / 価数搖動 / 金属絶縁体転移 / 熱電能 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、圧力によって絶縁体・金属転移を示す典型物質である、硫化サマリウム(SmS)の物性研究を重点的に進めた。特に今年度は、「圧力下における熱起電力測定系の構築」と、「SmS高圧相への適用」を中心に研究を進めた。 熱起電力測定は、古典的なマクロ物性測定法の一つであるが、実験の困難さから、圧力下における測定はほとんど行われていなかった。今回我々は、古くから知られている方法とは別の手法を用いることにより、限られた試料空間内において、容易に測定可能なシステムを構築した。この結果は、多様な系にも適用可能であり、重い電子系のみならず、高圧物性分野全体に波及効果をもたらすと期待される。このシステムを、価数搖動系として知られる、SmSの高圧相に適用した結果、以下の二点を明らかにした。1)エントロピー、キャリアの担い手が明確になり、価数搖動状態下において、電子の局在化が起こっていることを明らかにした。これは、通常の近藤効果、すなわち、ヴァーチャルな束縛状態に対して、リアルな束縛状態が形成されていることを示唆する。2)極低温において巨大熱電能を観測し、対応する温度において見られる電気抵抗の異常(ピーク構造)が、バルクの性質を反映するものであることを明らかにした。 以上の結果は、長年にわたり多くの研究者が取り組んできた、SmS高圧相の電子状態の解明に対して、進展を果たしたとともに、高圧実験手法の発展にも貢献を成したと考えられる。
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Research Products
(4 results)